2024年8月17日 金正恩「祖国解放の日」(79周年)関連動向
昨日の本ブログで略説したとおり、8月16日付け「労働新聞」は、金正恩が8月15日、①「祖国解放の日を迎え、大聖山革命烈士陵を訪ね崇高な敬意を表示」、②「祖国解放79周年に際し解放塔を訪問」、③プーチン大統領に答電を送付したことをそれぞれ報じる記事を掲載した。それらの概況は、次のとおりである。
ア 大城山革命烈士陵訪問
- 同行者:党秘書をはじめとする党中央委幹部
- 参拝状況:①金正恩名義の花輪奉呈、②金正恩が「参列者と共に、祖国の自主独立と人民の解放のために、社会主義偉業の勝利的前進のために貴い生命をささげた革命烈士たちに崇高な敬意を表示」、③「朝鮮人民軍儀仗隊の分列行進」実施
- 金正恩発言:「朝鮮革命の開拓世代が身につけていた不屈の信念と崇高な理念、積み上げた業績は・・朝鮮革命の発展において根本的で恒久的な意義を持つ貴い革命遺産、思想的血筋になる」、「白頭山の革命精神が末永く純潔に継承されるとき・・我々の偉業は・・限りない栄光と勝利に向けて怒濤のごとく前進するであろうと確言」
イ 解放塔訪問
- 同行者:党中央委幹部、崔善姫外相、武力機関指揮メンバー
- 参拝状況:①金正恩名義の花輪奉呈、②金正恩総書記が「朝鮮解放の歴史的聖業の実現に込められたソ連軍将兵の偉勲を敬虔に追憶し、烈士たちに崇高な敬意を表示」、③「朝鮮人民軍儀仗隊の分列行進」実施
- 金正恩発言:「偉大な祖国解放史にはロシア人民の優れた息子・娘たちが発揮した無比の犠牲的精神と不滅の功績が歴々と記されており、赤軍将兵の英雄的群像は朝鮮人民の心の中に真の国際主義の亀鑑として大切に刻まれている」、「未来志向的な国家関係を構築し、共通の目的実現のために肩を組んで闘う朝鮮とロシア人民間の偉大な友好・団結が、両国の烈士たちの貴い魂とともに、全面的開花の新時代とともにしっかり継承され、発展するものとの確信を表明」
ウ プーチン大統領に答電送付
- 「共通の敵に反対する血みどろの闘争の中で結ばれ、厚くなった両国の軍隊と人民の友誼と情は、今日、伝統的な朝ロ友好・協力関係を包括的戦略パートナーシップ、不敗の戦友関係に昇華・発展され、両国の強国建設と多極化された新世界の創設を促す強力な原動力になっている」
- 「剛勇なロシア人民が大統領の精力的な指導の下、国家の主権的権利と安全利益を断固と守り、地域の平和と国際正義を実現するための聖戦で必ず勝利を収めるものとの確信を表明」
- プーチン大統領の金正恩あて祝電(8月13日付け):「解放の日に際して、あなたに心からの祝賀を送ります」、「厳しい戦争の日々に固められた友好と相互援助の絆が、今日も我々両国間の善隣関係の発展のためのしっかりした基礎となっている」、「この前平壌で行われた会談で遂げられた合意を確実に実行することが、ロシア連邦と朝鮮民主主義人民共和国間の互恵的な協力の拡大を引き続き促すであろうと確信」
以上のような「祖国解放の日」に際しての金正恩の動向からは、ロシアに対する手厚い配慮がうかがえる。「祖国解放」をめぐる歴史的事実に鑑みれば、むしろ当然のこととも言えるが、国内的には、あくまでも金日成を中心とした抗日武装闘争の結果として位置づけているだけに、最近の緊密な朝ロ関係あっての対応というべきであろう。
なお、話題は変わるが、韓国報道によると、同じ8月15日(「光復節」)に際して、韓国の尹大統領は、新たな「統一ビジョン、統一推進戦略」を打ち出し、「第一に我が国民が自由統一を推進することのできる価値観と力量を確固として持ち、第二に北韓住民が自由統一を強く願うように変化を作り出し、第三に国際社会と連帯する3つの課題」を強調した由である。
そうした統一戦略の是非は、ここでは論じないが、それが北朝鮮において1960年代に提起・展開された3大革命力量論(北朝鮮の革命力量、南朝鮮の革命力量、国際的革命力量の強化を通じて祖国統一を実現)とまさにパラレルなものであることを指摘しておきたい。そうした対称性は、決して偶然のものではなく、まさに、当時の北朝鮮の統一姿勢と現在の韓国(尹政権)の統一姿勢が基本的に相似的なものであることの反映と考えられる。