2024年11月2日 ICBM試射の正当性を主張する外務省代弁人声明を報道の一方、金予正談話は不掲載(加筆・修正版)
本日の「労働新聞」は、 ICBM試射の正当性を主張する、「敵対勢力の軍事的脅威を抑止し、地域で力のバランスを維持するための実践的努力を一層増大させていくであろう」と題した外務省代弁人声明(11月1日付け)を掲載した。
しかし、ICBM試射に対する国連事務総長の批判に反発した金予正副部長名義の談話(11月1日付け、朝鮮中央通信が2日に報道)は、掲載していない。
これら声明及び談話の骨子は、次のとおりである。
ア 外務省代弁人声明(11月1日付け)
- 「最新型大陸間弾道ミサイル『火星砲―19』型の試射は・・主権国家の合法的かつ正当な自衛権行使である」
- 「しかし、米国とその追随勢力は・・(同試射を)悪辣に誹謗、中傷し、朝鮮半島とその周辺で侵略的性格の連合空中訓練を繰り広げたあげく、我々の自衛権を重大に侵害する国連安全保障理事会の会議を招集しようとする挑発的企図をさらけ出した」
- 「敵対勢力の無謀な軍事的対決騒動は、我が国家の安全権に対する重大な挑戦になると同時に、朝鮮半島を超越した北東アジアとアジア太平洋地域での力のバランスを破壊し得る禍根である」
- 「米国とその追随勢力の軍事的威嚇に圧倒的かつ絶対的な力を対抗させることで、核戦争勃発の危険を徹底的に抑止し、地域の政治・軍事情勢を強力に統制、管理するのは、我々の確固不動の戦略的選択であり、意志である」
- 「敵対勢力が我々の厳重警告に顔を背けて挑発的に出るほど、より強力な対応力に直面することになるであろう」
イ 金予正副部長談話(11月1日付け)
- 「10月31日、国連事務総長はスポークスマンを押し立てて朝鮮民主主義人民共和国の戦略兵器実験を不当に問題視する立場を発表した」
- 「国連事務総長がまたもや朝鮮民主主義人民共和国の正当な自衛権行使を問題視する不公正で偏見的な態度を取ったことに強い不満を示すとともに、全面排撃する」
- 「共和国が実施した当該の活動は・・外部勢力の様々な行動と構想に明白な警告信号を送り、増大する展望的な脅威から主権の安全を守るための我々の義務的で正当な自衛権行使の一環である」
- 「国連事務総長は、自分の重要な責務の遂行で公正さを失ってはならず、これ以上米国務省の一介のスポークスマンなどの役を進んで演じる恥ずべきことをやめるべきである」
- 「我々の国家元首は、昨日も明白に共和国政府の立場を再宣明した。路線の変更などあり得ない」
以上の内、外務省代弁人声明は、ICBM試射に際しての報道ないし金正恩発言の趣旨を繰り返したものであり、それを超える格別の主張は認められない。国際社会のみならず国内各層に対して、同試射の正当性、換言するならば、それが自ら進んで緊張を激化させるためにではなく、あくまでも米韓の圧迫に対抗し安定を維持するために、いわば迫られて実行したものであることを改めて主張するためのものと考えられる。
一方、「労働新聞」が金予正談話を掲載しなかったのは、国内に対して、ミサイル試射が国連事務総長から批判を受けている事実を敢えて国内に知らしめる必要なないとの判断に基づくものであろう。ただ、金予正がこうした反論をしていることは、逆に言えば、北朝鮮指導部において、国連という存在をそれなりに重視している(無視できないものと位置付けている)ことを反映したものとも言えよう。
なお、昨日の本ブログICBM試射に関するコメントで、使用された新型TELについて、韓国報道を鵜呑みにして「12軸と推定される」と記述したが、同試射を報じた1日放映の朝鮮中央テレビ映像において、11軸であることが確認できたので、そのように修正したい。