2026年5月27日 金正恩参観下での各種戦術ミサイル試験実施を報道
朝鮮中央通信は、本日、国防科学研究機関が5月26日、重要兵器試験を実施し、金正恩らがこれを参観したことを報じる記事を掲載した(「労働新聞」には非掲載)。その骨子は、次のとおりである。
・ 試験実施主体:ミサイル総局と国防科学院
・ 参観同席者:朴正天国防省顧問・元帥、趙春龍党秘書・大将、金正植党(軍需工業部)第1副部長・大将、張昌河ミサイル総局長・大将、金勇換国防科学院長・中将、金強日国防省装備総局長・中将、兪賛善総参謀部砲兵局長・少将、金明善国防省兵器審査局長・大佐
・ 試験対象:①軽量級多用途ミサイル発射体系、②多連装戦術巡航ミサイル兵器体系
・ 試験目的:①戦術弾道ミサイルの特殊使命戦闘部の威力、②射程が延ばされた240mm操縦ロケット砲弾の超精密自治誘導航法システムの信頼性、③戦術巡航ミサイルの人工知能(AI)誘導命中の正確性
・ 戦術巡航ミサイルの概要:「南部国境地域の長射程砲兵旅団に装備」を予定、「超精密自治航法体系と地形照合航法体系が結合され、AI末期誘導機能が導入・・滑空及び推進複合飛行方式で100キロラインの標的を超精密打撃」
・ 発射車両:「全ての発射車両の射撃制御系統と自動化体系が現代戦の適合条件に合わせて完全に更新され、戦闘適用性が向上した」
・ 金正恩注目言動:「(敵の)生存自体を不可能にする程度の破壊力を備えるのは我が軍の作戦遂行において必須の条件となる、そのような能力は敵に極度の不安と恐怖を与えるようになり、それ自体が戦争抑止の重要なカギ」
※ 韓国軍は、26日、北朝鮮が同日午後1時ころ、平安北道定州付近から西(黄)海に向け近距離弾道ミサイルなど数発を発射、約80㎞飛翔したことを明らかにしていた。
同記事の添付写真には、2両のミサイル発射台車(TEL)とそこから発射される3種類のミサイルの姿が写し出されている。2両のTELは、台車部分は酷似しているが発射管の部分が異なる。おそらく試験対象の①軽量級多用途ミサイル発射体系と②多連装戦術巡航ミサイル兵器体系であり、①から戦術弾道ミサイル(1発)と240mm操縦ロケット砲弾(9発搭載可能)が、②から巡航ミサイル(10数発搭載可能)が、それぞれ発射されたのであろう(弾道ミサイル以外の実際の発射基数は判然としない)。
各種弾頭の開発に加え、発射車両(TEL)の射撃制御系統と自動化体系の更新も地味だが、(事実なら)注目に値する。
また、戦術巡航ミサイルの「南部国境地域の長射程砲兵旅団に装備」予定との記載は、金正恩の5月6日の重要軍需工業企業所現地指導に際しての「今年中に南部国境の長射程砲兵部隊に装備させる3個大隊分の新型(155mm)自走平曲射砲」との表現と軌を一にするものであり、17日の全軍師・旅団長会合における「南部の国境線を守っている第1線部隊を強化」との方針が言葉だけでないことを示すものといえよう。
いずれにせよ今次試験の実施及びこうした報道ぶりは、これら各種新兵器などの開発進展を誇示することによって、「敵に極度の不安と恐怖を与える」ことを企図したものであろう。その狙いが専ら対外的なものであることは、本記事が「労働新聞」には掲載されていないことからも明らかである。国内向けの士気高揚は、韓国で優勝した女子サッカーチームの帰国歓迎報道が担っているようである。
余談ながら、同チームの訪韓、韓国チームとの対戦を南北スポーツ交流の再開のごとく錯覚(こじつけ?)しての「歓迎」だの「応援」だのとの動きは、当該チームの関係者・選手らにとっては、実に危険千万、迷惑極まりないものであったと推測される(下手に笑顔でも浮かべれば帰国後の批判は免れない。下手をすれば、選手生命どころか文字通り意味で命さえ危うくなる)。彼らにすれば、あくまでも国際試合に参加する過程で、たまたま試合会場となった韓国を訪れ、対戦相手となった韓国チームと(おそらくはやむなく)対戦したに過ぎないことは言を俟たない。そうした危険を克服して無事帰国できたことが、優勝よりも一層凱旋の喜びを大きなものしているのではないかと想像される。
なお、最近の金正恩の軍事関連動向における同行者の顔ぶれは、掲載順序に若干の異同があるが、今回を含め概ね一致している。ただ、今次記事では、何故か各人の階級も明示されたことが注目される。