rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年8月8日 最高人民会議常務委員会第14期第21回会議を開催

 

 本日の「労働新聞」は、標記会議が8月7日、崔竜海委員長の「司会」により開催され、次の事項が決定された旨を報じる記事を掲載した。

  • 医薬品法制定:医薬品生産と検定、保管、供給および販売、利用において秩序を厳格に立て、医薬品が徹底して人民の健康を保護増進することに使用されるようにするための原則的問題を規定
  • 手続き秩序違反行為防止法制定:経済管理と社会全般において手続きの秩序を強化するための法的要求を反映
  • 自衛警備法制定:全人民的な自衛警備体系を確立し自衛警備に対する条件保障と指導統制を強化し、制度保衛と人民の生命財産保護に積極貢献するようにするための事項を明示
  • 宇宙開発法改正:宇宙開発活動を法律的にしっかりと担保できるように宇宙開発の基本原則と実行手続き・方法などと関連した規範を細部化、具体化
  • 最高人民会議第14期第7回会議の9月7日開催を決定:社会主義農村発展法、園林緑化法の採択と関連した問題、組織問題を討議の予定

以上の決定事項のうち、医薬品法の制定は、先のコロナ国内感染拡大時における医薬品の供給不足現象などを受けてのものと思われる。こうした法制定にまで至ったことは、北朝鮮指導部にとって、同現象がいかに深刻な衝撃を与えたかをうかがわせるものといえよう。

 また、手続き秩序違反行為防止法については、具体的にどのような手続きを念頭においたものなのか判然としないが、いずれにせよ、行政・経済手続きなどに関する公正性の確保、換言すると官僚主義に対する制約を強めることを目指したものと思われる。

 自衛警備法というのも、実態がよく分からない。個別の機関・企業などが行う警備活動に関する活動を規定したものであろうか。そうであるとするなら、社会全般に窃盗、横領などの行為が拡散していることを反映したものとも考えられる。

 最後に気になるのが宇宙開発法の改正で、「衛星打ち上げ」などの活動の下準備とも思われる。

 9月7日開催の最高人民会議における社会主義農村発展法の制定は、昨年来の農村振興政策を法的に規定し、その促進を図るものであろう。金正恩の農村振興に向けた意気込みは、相当強いと思われる。

2022年8月7日 「有熱者」はコロナにあらずと発表

 

 本日の「労働新聞」が掲載した国家非常防疫司令部のコロナ感染状況に関する「通報」は、6日18時までのコロナの新規「有熱者」を引き続きなしとした上で、前日報道した5日夕方に発見された6名の「有熱者」については、「各種実験検査を厳密に実施した結果、発熱原因が胃腸炎をはじめとした(新型コロナとは)別の疾病に因るものであることが科学的に究明された」と報じた。

 とりあえず、一安心ということか。

2022年8月6日 「有熱者」が再発生

 

 本日の「労働新聞」が掲載した国家非常防疫司令部のコロナ感染状況に関する「通報」は、8月4日18時から5日18時までの新規「有熱者」をなしとした上で、「5日18時以降、平安北道定州市と咸鏡南道新興郡において6名の有熱者が発生し、該当非常防疫機関迅速機動防疫組と迅速診断治療組のメンバーが現地に出向き発熱原因を究明中にある」と報じた。

 昨日の本ブログで紹介したとおり、北朝鮮国内の新規「有熱者」は、7月29日以来なしと報じられていた。今後の推移が注目される。

 

2022年8月5日 評論「現防疫安全担保のための国家防疫体系の全一性確固として保障」

 

 標記評論は、「防疫大戦は祖国保衛戦、人民死守戦」との共通題目の下に掲載されたコロナ防疫関係記事の一つである。防疫活動の概況を説明(自賛?)しているので、紹介したい。

 まず、コロナ感染の現況については、「全国的に最近1週間、新たに掌握された有熱者がおらず、治療中患者がすべて回復したことによって、国の全般的な防疫情勢は確固たる安定局面に入った」として、収束を誇示している。

 また、防疫活動への取り組み状況については、「国家非常防疫司令部では、各地における非常防疫体系稼働状況を実時間(リアルタイム)で掌握了解すると同時に、該当機関との連携の下に各種治療案内指導書を適宜更新、示達しており、防疫・保健実践において成し遂げられた経験を総合して広く一般化する事業を実質的に展開している」と紹介しているのをはじめとして、様々な関係機関の活動を紹介している。

 そこで言及された主な機関としては、「各級非常防疫単位、治療予防機関」、「数万名の戸(家庭の意)担当医師と医療活動家」、「救急医療奉仕体系、遠距離医療奉仕体系など国家的に立てられた医療奉仕体系」、「中央級病院と各道、市、郡病院に組織された迅速協議診断組、迅速診断治療組」、「すべての部門、すべての単位の衛生熱誠活動家」などがある。

 これらの中には、重複もあるであろうが、コロナ蔓延を契機として、国内で防疫関連の機関・体制が急速に整備されたことがうかがえる。こうした危機対応力は、北朝鮮の得意技と言えよう。

 ちなみに、国家非常防疫司令部の発表によると、新規の「有熱者」は、7月29日以来なしとされており、治療中患者数も、8月3日以来発表がない(8月2日に5人とされていたところ、3日に回復者5人と発表されており、同日以降はゼロを意味)。また有熱者の累計数も、8月3日までに477万2813人とされて以降、発表がない。

2022年8月3日 7月人民経済計画遂行状況を報道

 

 本日の「労働新聞」は、標記に関し、「党中央委員会第8期第5回全員会議の決定を高く奉じ果敢な攻撃戦を展開し引き続き革新 基幹工業部門の多くの単位で上半年計画を完遂した気勢高く7月人民経済計画遂行」と題する記事を掲載した。

 こうした記事の掲載は、毎月月初に恒例のものである。ただし、同記事は、以前のように各部門別に計画遂行状況を紹介するのではなく、部門横断的に特徴的な取り組み状況を紹介するという先月以来のスタイルで構成されており、見出しで示された「多くの単位で・・計画遂行」を超える個別の部門、工場・企業所の計画完遂あるいは遂行状況については、採掘工業部門で5つの炭鉱連合企業所の名前が挙げられた以外には、言及していない。

 なお、基幹産業部門にこうした成果をもたらした取り組みとして紹介されたのは、第一に、「部門と部門、単位と単位相互間で共に支持補充しつつ、連帯的革新の火の手を起こした」ことで、「あい路と難関の中でも諸部門と多くの単位が7月計画を完遂した過程では、これが重要な要因として作用した」と主張している。

 第二は、「生産正常化の基本方途を設備管理、技術管理に求め、設備のフル稼働、フル負荷を保障することに優先的な力を注いだ」ことである。また関連して、「これと共に、諸生産工程を電気節約型、労力節約型へと改造することをはじめとして現存生産土台をよりしっかりと固める事業を推し進めている」ことも紹介している。

 最後に、「この(基幹工業)部門の幹部と労働階級を積極的に助け後押ししてくれた各地幹部と勤労者の努力」を指摘している。つまり、各地の党・経済指導機関や他の産業部門による支援の効果を強調しているわけである。

 こうした記事のスタイルのため、部門別の計画達成状況を推測することは、これまで以上に困難になっているが(そのためのスタイル変更か?)、以上のような記事内容からは、経済運営における全般的な連関性が一層重視されていること、そのため中央の指揮機能が強化され、一方で個別企業の利益追求といったことは相対的に軽視されざるをえない状況をうかがうことができよう。こうした趨勢の中では、いわゆる「企業自主権」といったものは、制約されざるをえないであろう。

2022年7月30日 新型コロナの「新規有熱者の発生なし」と発表

 

 本日の「労働新聞」が掲載した国家非常防疫司令部の発表によると、7月28日午後6時から29日午後6時までに新たに発生した「有熱者」はなしとのことである。新規「有熱者」数については、25日の発表(24日まで)で初めて二けた台(50余人)とされたが、それから5日を経て、とうとう発生者「0」に至ったということになる。

 これ自体は、にわかには信じがたい数字だが、それにしても、これまでにも繰り返し述べているように、国内におけるコロナの感染状況が基本的に収束の方向に進んでいる、それもかなりの抑え込みに成功しているからこそ、このような数字を発表できるのであろう。

 こうした「成果」の背景に関し、25日の本ブログで北朝鮮の社会全般に対する統制力が他国に比較できないほどの水準で機能していることを認識させるものと記したが、本日掲載の関連記事も、「防疫大戦は祖国保衛戦、人民死守戦 全人民的な防疫事業で我が社会特有の組織力と団結力をより高く発揮」との見出しを掲げて、国内の防疫活動を報じている。ここで用いられた「我が社会特有の組織力と団結力」というのは、単なる自賛ではなく、北朝鮮体制の特質を的確に反映した表現と思われる(それが称賛されるべきものであるのか否かは別問題として)。

2022年7月28日 祖国解放戦争戦勝69周年の記念行事で金正恩が演説

 

 本日の「労働新聞」は、7月27日、祖国解放戦争戦勝記念塔前で、標記記念行事が開催され、李雪柱夫人とともに出席した金正恩が演説を行ったことを報じるとともに、「祖国解放戦争参戦者たちは、我が共和国の最も英雄的な世代である」との見出しの下、同演説の全文を掲載している。

 同演説に関し、韓国や我が国の一般報道では、同演説の一部を引用してかなり強硬な対米・対韓対決姿勢を示したかのように伝えているが、全体的な論旨、さらには、同日の行事全般を総合すると、必ずしも、そうとは言えないと考えられる。

 確かに、同演説は、金正恩自ら対米、対韓非難を展開し、とりわけ、韓国に対しては、はじめて「尹錫悦」及び「尹錫悦政権」を名指しして非難した点で注目に値するものである。

 しかし、対米関係で非難しているのは、北朝鮮に対する「2重的態度」や「悪魔化」といった宣伝次元の政策である。その上で、「我が国家の印象を引き続き毀損させ、我々の安全と根本利益を引き続き厳重に侵害しようとするならば、必ず、より大きな不安と危機を甘受せざるをえないであろう」と、抽象的なけん制を加えているに過ぎない。

 一方、韓国に対しては、「歴代のいかなる保守『政権』も凌駕する極悪無道な同族対決政策と事大売国行為に没頭して朝鮮半島の情勢を戦争の道へと引きずりこんでいる」などかなり強い表現を用いており、「武器開発及び防衛産業強化策動に一層熱を上げ、米国の核戦略装備を大々的に引き込もうしている」ことを批判している。しかし、ここでも最も強い反発は、「特定の軍事的手段と方法によって先制的に我が軍事力の一部分を無力化」するとの概念であり、それに対する牽制として、「そのような危険な試みは即時強力な力によって膺懲されるであろうし、尹錫悦『政権』とその軍隊は全滅するであろう」との威嚇的言辞を弄しているわけである。ただし、それ以外の動向に対しては、「これ以上、尹錫悦とその軍事やくざがふりまく醜態と客気を黙って座視できない」としつつも、対応については、米国に対する牽制と同様、「軍事的緊張を高潮させる今のような態度を続けていくなら、相応する対価を払うことになるだろう」と抽象的な表現にとどめている。

 また、そうした国外の脅威に対する自国の対応としては、「我が国家の核戦争抑制力」は「万全態勢にあり」、「この地の安全とこの国の制度と主権は・・徹底して担保されていることを確言します」とし、核実験はもとより軍備増強などへの直接的言及は控えている。

 そうした中で、「党中央は最近に国家防衛力の発展戦略に関する任務を策定し正確な執行へと領導」していることを明らかにしている点が注目されるが、その内容については、「勝利は常に愛が熱烈で信念が強い側にあり、これは先端軍事技術が総発動される今日の戦争にも変わることがない」との考え方を前提に掲げつつ、「人民軍隊は百勝の源泉である政治思想的優越性を高く発揚させる」べきことが強調されている。おそらく、この部分は、先の中央軍事委員会の決定、すなわち前線部隊への核兵器運用任務の付与、軍内党組織の機能強化などを反映しての表現と考えられる。

 加えて留意すべきは、この演説の大半は、記念行事に参加した戦争老兵への賛辞やその精神の継承の重要性に置かれており(その点は、7月27日付け社説と同様)、また、同行事では、落下傘降下、アクロバット飛行、花火、芸術公演など祝祭的色彩の濃いものであった。

 また、同記念日に際しては、戦勝杯体育競技大会(3日~27日、平壌市と地方各所)、同ボーリング競技大会(25日~27日、平壌ボーリング館)、更には、同日夜、金日成広場で「青年学生の夜会」が、また、「この日、各道所在地と市、郡でも青年学生の慶祝舞踏会があった」のである。つまり、金正恩が演説していた時、青年学生はダンスを楽しんでいたのである。

 上掲演説の含意は、こうした諸般の状況等を念頭において検討されるべきであろう。