rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年4月23日 金正恩総書記の「核反撃想定総合戦術訓練」指導を報道

 

 本日の「労働新聞」は、4月22日、600㎜超大型放射砲を動員した「核反撃想定総合戦術訓練」が初めて実施され、金正恩がこれを「指導」したことを報じる記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 訓練概要:「超大型ロケット砲兵部隊を国家核兵器総合管理システムである『核引き金』システム内で運用する訓練」
  • 訓練目的:「我々の核戦力の信頼性と優秀性、威力と多様な手段に対する示威、核戦力の質的・量的強化」
  • 背景事情:米韓空軍が4月12日から26日まで「連合編隊群総合訓練」を実施、「一日平均100回の発進を強行して極度の戦争熱を鼓吹」、4月18日には「連合空中浸透訓練」も実施、「我が国家の安全環境が甚だしく脅かされている看過できない現実」
  • 指導幹部:金正恩が「訓練を指導」、金正植(軍需工業部)副部長が「同行」、張昌河ミサイル総局長が「訓練を指揮」
  • 訓練概況:①「国家最大核危機事態警報である『火山警報』システムの発令時、各部隊を核反撃態勢へ移行させる手順と工程に熟達させるための実動訓練」、②「核反撃指揮システム稼働演習」、③「核反撃任務が課された分隊を任務遂行工程と秩序に熟練させ、核模擬戦闘部を搭載した超大型放射砲弾を射撃させる手続き」(下線部重点事項)
  • 参加部隊:「当該の連合部隊から選定された火力襲撃中隊」、「関連部隊、区分隊の指揮官、軍人が参観」
  • 放射砲弾(ミサイル)飛翔状況:「射程352キロの島の標的を命中打撃」(添付写真では、4発を同時発射) 
    • 韓国軍は、22日、同日午後3時1分ころ平壌付近から短距離弾道ミサイルと推定される飛翔体数発が発射され300㎞飛行後、東(日本)海に弾着した旨を発表
  • 金正恩言動:「訓練結果に大満足を表示・・高い命中正確度について・・高く評価」、「(今次)訓練が成功裏に行われたことで、戦術核攻撃の運用空間を拡張し、多重化を実現するという党中央の核戦力建設構想が正確に現実化したと満足げに評価」、「戦争抑止戦略と戦争遂行戦略の全ての面で核戦力の中枢的役割を絶え間なく強める方向で戦法と作戦を引き続き完成し、核戦力の経常的な戦闘準備態勢を完備していくことを強調」

 これまで北朝鮮は、2023年3月27日、金正恩が「核武器兵器化事業」に対する指導を行う中で、「国家核武器総合管理体系『核引き金』の情報化技術状態」を「了解」すると同時に、同人の指導下で模擬核弾頭搭載弾道ミサイルの「師範教育射撃訓練」を実施している。

 更に、本年3月18日には、やはり金正恩の「指導」の下、「超大型放射を装備して重要火力打撃任務を受け持っている西部地区砲兵部隊の射撃訓練」において、「600mm放射砲」6発の「一斉射撃」を実施している。

 今次訓練は、そうした各種訓練(「核引き金」に基づく迅速対応、模擬核弾頭の搭載、ミサイルの一斉発射)を組み合わせた文字通りの「総合戦術訓練」であったのであろう。

 なお、上記報道では、訓練実施の背景事情として米韓軍の合同演習による情勢悪化について相当の分量を割いて説明している。こうした言及は、3月初頭以来繰り返してきた各種軍事訓練等の報道においては、ほとんどみられなかったものである。そのことは、核兵器使用を想定した今次訓練については、3月来の通常戦力を用いた訓練とは別格のものと位置付けていることの反映と考えられる。

(本日は、午前中所用でブログ更新が遅くなりました)