rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年10月10日 金正恩の各種軍事訓練指導等を一挙報道

 

 本日の「労働新聞」は、①「国の戦争抑止力と反撃能力を検証判定し、敵どもに厳重な警告を送るための朝鮮人民軍戦術核運用部隊の軍事訓練」及び②「朝鮮半島情勢の厳重な状況に対処し、敵どもの挑発を無力化させるため」の「朝鮮人民軍前線長距離砲区分隊と空軍飛行隊の火力打撃訓練」がそれぞれ党中央軍事委員会の決定に基づき実施され、金正恩がそれらを「現地で指導」したこと及び②の訓練に参加し功績をあげた戦闘飛行士と会い祝賀激励したことを報じる記事を大量の写真とともに掲載した。

 そこで報じられた各軍事訓練の概況は、下表のとおりであるが、9月25日以来10月9日に至る一連のミサイル発射などの動きと基本的に符合するものとなっている。意外なのは、25日の発射が水中(湖水)からのものとされていることであろう。

 同報道で注目されるのは、これら訓練実施の背景となった米韓側の軍事動向などを詳細に論じ、それへの対応として実施したものであることを殊更に強調していることである。また、今後の米韓への対応についても、金正恩の「持続的、意図的で無責任な情勢激化行動は、やむを得ない我々のより大きな反応を誘発させるだけ」との発言を紹介し、自ら望んで緊張を高めるものではないとの意向をにじませている。

 一般報道では、金正恩の発言中、「(敵は)引き続き対話と協商を云々しているが、我々は、敵どもと対話する内容もなく、また、そうする必要性も感じない」、「必要な場合、相応なすべての軍事的対応措置を強力に実行していく」と言った部分だけが着目されているが、それは、あくまでも、米韓側の圧迫的行動を前提にしたものであることにも留意が必要であろう。こうした北朝鮮の軍事活動は、北朝鮮が一方的に展開しているゲームとしてではなく、北朝鮮VS米韓(+日?)という双方の相互作用の一コマとして見るべきと考える。

時期(場所) 訓練種別 訓練内容 訓練目的等 結果等 背景情勢、韓国軍発表
9月25日早朝(西北部貯水池水中発射場) 戦術核運用部隊 戦術核弾頭搭載想定弾道ミサイル発射訓練 ①戦術核弾頭部搬出・運搬、作戦時迅速・安全な運用取扱秩序の確定、②全般的運用体系の信頼性検証・熟達、③水中発射場での弾道ミサイル発射に熟練、迅速反応態勢検証 ①予定経路により東海上の設定標的に飛行、設定高度での正確な弾頭起爆信頼性を確証、②計画された貯水池水中発射場建設方向を確証 6:35平安北道泰川からKN23を1発(飛距離600km、高度60km)
9月28日 戦術核運用部隊 同上 南朝鮮作戦地帯内の飛行場を無力化 核弾頭運用と関連した全般体系の安全性を検証 7:23平壌順安からN23を2発(360,30)
9月29日、10月1日 戦術核運用部隊 各種戦術弾道ミサイル発射訓練   該当設定目標に上空爆発と直接精密・散布弾打撃の配合で命中し、武器体系の正確性と威力を確証 9/29 20:48,57平安南道順川からKN252発(350,50)。10/1 6:45,7:03平壌順安から2発(350,30)
10月4日 戦術核運用 新型地対地中距離弾道ミサイル 敵により強力で明白な警告送付との中央軍事委決定採択 日本列島超え4500㎞の太平洋上の設定目標水域打撃 「持続する朝鮮半島の不安定な情勢に対処」 7:23 慈江道舞坪里から火星12を1発(4600,1000)
10月6日早朝 戦術核運用部隊 超大型放射砲と戦術弾道ミサイル命中打撃訓練 敵の主要軍事指揮施設打撃想定の機能性弾頭部の威力検証   6:01,23平壌市三石からKN25(350,80),KN23(800,60)
10月6日 火力打撃 西部前線長距離砲兵区分隊と西部地区空軍飛行隊の合同打撃訓練 敵軍事基地を想定した島目標に対し、①空軍飛行隊の中距離空対地誘導弾・巡航ミサイル打撃と各種近接襲撃、爆撃飛行、②砲兵区分隊の順次別(?)火力打撃 前線砲兵と戦闘飛行士の作戦動員準備状態と戦闘実力の不意的・厳格な検閲を通じ、有事に備えた作戦準備態勢の正確性と高度の実戦能力を明確に実証

午後2時ころ爆撃機4機と戦闘機8機が黄海道曲山付近で1時間程度対地射撃訓練等実施。韓国から対抗して30余機が出動

 

10月8日 火力打撃 空軍大規模航空攻撃総合訓練。150余機の各種戦闘機同時出撃・史上初 空軍師団・①連隊別に戦闘飛行士の地上目標打撃と空中戦遂行能力を判定、②飛行指揮熟練・部隊別協同作戦指揮能力向上など 新型空中武器武器体系の試験発射を通じて信頼性を確証 「東海に再進入した米空母を含む海上連合機動訓練敢行の情勢を背景」
10月8日晩 火力打撃 前線東部地区長距離砲兵区分隊の大集中火力打撃訓練 敵作戦飛行場打撃を想定 提示された戦闘状況下における迅速対応能力と軍事的威力、武器体系の戦闘的性能を再度確証  
10月9日早朝 戦術核運用部隊 超大型放射砲射撃訓練 敵の主要港湾打撃  

1:48.58江原道文川から KN25を2発(350,90)