rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年4月27日 金正恩金日成軍事総合大学訪問を報道

 

 4月26日付け「労働新聞」は、金正恩が「朝鮮人民革命軍創建92周年」に際し、4月25日、金日成軍事総合大学を「祝賀訪問」したことを報じる記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 同行者:朴正天秘書、強純男国防相、李永吉総参謀長、朝鮮人民軍の各軍種司令官、各大連合部隊長
  • 主な動向:①迎接報告(同大学総長)、花束贈呈、②金正恩演説(骨子後述)、③革命事績館と沿革紹介室を視察、④講義室で行う講習と教育方法研究室での討論会を参観、⑤統合教授管理指揮室で教育の現代化状況を具体的に確認、⑥教職員・学生と記念写真撮影、⑦金日成軍事総合大学金日成政治大学間のサッカー競技を観戦、⑦国防省主催祝賀宴会(同日夕。強純男国防相が演説。党中央幹部も招待、金正恩については添付写真で宴会場入場の姿あるが記事中に参席の表現なし)
  • 金正恩演説の骨子:「(大学創設以来の歴史を回顧の上で)大学の全ての教員、研究士と幹部の功労を高く評価し、心からの謝意を表します」、「現代戦に万端の準備を整えた軍事人材、党軍の頼もしい軍事指揮官をより多く育成するのは、金日成軍事総合大学の主な任務です」、「愛する我が国家のために、世界最強を末長く轟かせる我が軍の百年の大計のために、堅実な革命精神によって、軍事教育の変革によって、学業の熱情によって忠実に服務していきましょう」
  • 金正恩の視察時の注目言動:「党の4大強軍化路線と軍事教育内容を実戦化、総合化、現代化するとの方針を一貫して堅持し貫徹することによって、全ての学生を党と革命に対する絶対忠誠と高い軍事的能力を身につけた知恵深く勇猛な万能の指揮官に育成しなければならない」
  • その他注目点:記事中で金正恩を「偉大な師匠、慈父(자애로운 어버이)」と表現(従前の青少年層視点ではなく、軍事大学教職員という成人を念頭に「慈父」表現を使用は、注目すべきこと)

 金正恩の軍関係学校訪問は、4月10日の金正日軍政大学への訪問に続くものである。今次訪問時の言動は、演説において米韓の軍事的圧力への批判や戦争準備などへの直接的言及がないなど、昨今の情勢の中では、むしろ想定外といえるほど穏当なものであった。一方、演説では、教職員・学生に対する懇ろな口調が印象的であり、軍内部での人心収攬に向けた腐心が改めてうかがわれる。

 また、視察時に言及したとされる「党の4大強軍化路線」及び「軍事教育内容を実戦化、総合化、現代化するとの方針」がいつどのように示されたのか、とりわけ前者(従前の「4大軍事路線」とは別物であろう)の「4大」が具体的に何を指すのかが注目される。

 なお、添付された記念写真は4組の集団と撮影しており、推測するに、教職員が1組とすると、残り3組は、それぞれ異なるコース(課程)の学生の集団であろう。換言すると、同大学では、少なくとも三つのコースの教育を同時並行で行っていると考えられる(だからこそ「総合大学」と呼ばれているのであろう)。