rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年9月9日 閲兵式をはじめとする「共和国創建75周年」慶祝行事を報道(加筆版)

 本日の「労働新聞」は、通常時の倍の12ペー建てで、いずれも9月8日に実施された標記関連行事の状況を報じる記事を掲載した。

 時系列的にいうと、まず、中国共産党政治局員・国務院副総理である劉国中を団長とする中華人民共和国党及び政府代表団の平壌到着があり、次に、金徳訓総理が同代表団と「会った」こと、更に、金正恩が同代表団を「接見」したことが、それぞれ伝えられている。金正恩との接見については、「親善的な談話においては、朝中両国間の親善協調関係を発展させ、両国人民の福利のための諸分野の協調と協力事業をより活性化していくことについて見解一致を見た」などとされている。

 同代表団に関する中朝関係についての表現は、「親善的」が基調で、せいぜい「同志的友誼に満ちた」とされる程度で、かつてのような「血で結ばれた」とか「革命的連帯」などといった勇ましい表現は余りみられず、やや表面的・実務的な印象を拭えない。

 慶祝行事としては、まず、共和国創建75周年慶祝中央報告大会が金正恩出席の下、開催され、金徳訓総理が報告を行った。同人の「健在」は、昨日報じられた潜水艦進水式への出席で確認されていたが、同大会の「報告」という役割まで担うとは、更なる驚きである(報告の全文も別途に掲載)。

 夜間には、金日成広場において共和国創建75周年慶祝民防衛武力閲兵式が挙行された。同閲兵式では、演説はなく、呉日正党(民防衛)部長による「閲兵部隊検閲」に続いて行進(パレード)が行われた。

 行進は、徒歩部隊が、「首都党員師団縦隊」を先頭に平壌市及び各道・直轄市の労農赤衛軍縦隊、金日成総合大学及び金策工業総合大学の労農赤衛軍縦隊、黄海製鉄連合企業所をはじめとする「重要工業部門」や国家科学院、文化省をはじめとする政府機関など職場単位の労農赤衛軍縦隊、赤い青年近衛隊縦隊と続いた。

 次に、車両部隊として、モーターサイクル(オートバイ)縦隊、トラクターがけん引する対戦車ミサイル縦隊、高射砲縦隊、セメント運搬車両やミネラルウォーター運搬車両などを装った偽装放射砲縦隊などが登場した。

 同閲兵式で最も注目されたのは、「娘」が金正恩とほぼ同格の形で着席したことであろう。記事は、この状況を「金正恩同志と尊敬するお子様を奉じて(모시고)、李炳哲元帥、朴正天元帥と軍部の指揮官たちが主席檀特別席に着いた」と報じ、添付写真では、朴正天が片膝をついて娘に話をしている様子が写されている。

 こうした演出は、露・中の代表団長が金正恩の両隣を占めた「戦勝70周年」の閲兵式とは対照的で、今次閲兵式では、中国代表団長は金正恩からは、やや離れた位置につかされた。ちなみに、ロシアは、今次記念日に際しては政府高官を派遣しなかった(軍ん合奏団のみ派遣)。「戦勝70周年」は対外関係を、今次記念日は内政(家庭?いずれにせよどちらもドメスティック)関係をアピールの場とするというのが北朝鮮の基本的演出方針であったのかもしれない。

以下加筆

 そうした方針は、金日成広場において、閲兵式に続く形で、「共和国創建75周年慶祝青年前衛たちのたいまつ夜会(松明を手にしてのパレード及び舞踏会)が「偉大な我が国家のため愛国青年たち前へ!」と銘打って開催され、金正恩親子を除く閲兵式参加高官のすべてがこれを観覧したことからもうかがえる。この模様は、その後、朝鮮中央放送で50分余りにわたり録画中継された。