rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年4月25日 外務省米国担当副相が「談話」を発表

 

 朝鮮中央通信は、本日、外務省・金雲哲(音訳)米国担当副相の「談話」(25日付け)を報道した。その重要部分は、次のとおりである。

  • 「過去の十余年間、国連で対朝鮮制裁決議履行の監視に携わってきた不法な存在が凋落する危機に瀕するようになると、米国が破綻した制裁・圧迫構図の抜け穴を埋めてみようと汲々としている」
  • 「しかし、それ(米国による制裁措置)がここ朝鮮半島では米国の首を締めるわなになっている・・過去、米国が国連舞台で新しい制裁決議をつくり上げるたびに、朝鮮民主主義人民共和国のより威力あり、より向上した核実験を触発させたように、米国の極悪非道な制裁は我が国力の段階的上昇を奮発させた触媒剤、動力に作用してきた」
  • 「米国が朝鮮民主主義人民共和国に反対する新しい制裁劇を演じる場合、我々はそこから米国が最も恐れる力のレベル・アップに必要な新しい機会を持つことになるであろう」
  • 朝鮮民主主義人民共和国は、・・既に掌握した軍事技術的強勢を不可逆的に作り、周辺の安保形勢の統制力を向上させるためのより強力な実際行動を取っていくであろう」

 以上のうち、最初の引用部分は、2009年6月採択の国連安保理決議(第1874号)により設置された北朝鮮に対する制裁監視などのための専門家パネル(=「不法な存在」)の存続が昨月の安保理会議においてロシアの拒否権行使により否決されたこと(=「凋落する危機に瀕する」)を受けて、米国などがそれに代わる機構の設置を模索していると伝えられていることを指すものであろう。

 したがって、それ以降の引用文は、そうした機構が設置された場合には、北朝鮮が更なる対抗措置を取るとの姿勢を示すことにより、そうした試みを牽制するものと考えられる。ここで注目されるのは、そうした対抗措置の過去の事例として敢えて「核実験」に言及していることであり、これは、今後の対抗措置として、その再現も辞さないとの姿勢を示したものと言えよう。ただ、実際問題として、有志国による「専門家パネル」などの設置があったからと言って、北朝鮮が直ちにそれを口実に核実験を行うのかといえば、その可能性は極めて低いのでないだろうか。

 むしろ、興味をそそられるのは、外務省対外報道室長に続いて金予正が談話を発出した(昨日付け本ブログ参照)その翌日、具体的な出来事がない中で、外務省副相名義の談話が出されるという、「談話」発出のタイミングと名義人のレベルである。

 そこに何か北朝鮮内部における機関相互間の競争ないし対抗的な力学を感じるのは考え過ぎであろうか。

 なお、金恩哲(김은철)については、聯合通信ホームページの人名データベースでは、2007年に朝鮮赤十字会副書記長、年度未詳で対外文化連絡委員会副局長の肩書しか記載されていない。