rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年5月2日 第5回全国分駐所長会議の開催を報道

 

 本日の「労働新聞」は、標記会議が4月30日から5月1日までの間、開催されたことを報じる朝鮮中央通信の記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 出席者:「党中央委員会の金亨植(法務部)部長、李太燮社会安全相、社会安全省の沈紅彬政治局長、全国の分駐所長と模範的な安全員、道・市・郡安全機関の責任幹部をはじめとする分駐所の活動に関連のある該当幹部」
  • 「会議報告」(李太燮社会安全相)の骨子:第4回全国分駐所長会議(2012年)以来の金正恩の社会安全部門に対する指導内容を縷々称賛の上、「党の社会安全政策を分駐所事業に具現していく過程で収められた成果と・・肯定的素行について言及」するとともに「分駐所事業において必ず克服すべき偏向的問題(複数)を深刻に総括」。「すべての分駐所を人民のために滅私服務する従僕集団とし、社会主義祖国の政治的安全と人民の幸福を保衛すること」を「総的任務」と規定したのに続き、具体的課題として、①「党及び勤労団体組織と政権機関との連携の下、遵法教育を強化し、住民が法秩序を自覚的に順守するようにする」、②「各種事故と災害を未然に防止し、被害を最小化するための安全事業対策」、③「経済発展と人民生活発展を阻害するあらゆる違法行為と非妥協的に闘争」などを強調。「我が社会の政治的安全は、人民大衆の高い熱意と無限大の力に依拠して固く守られる」としつつ、「人民に対する尊重と献身的服務精神」などを訴え
  • 「討論」(複数、討論者不詳)の骨子:「成果を収めた単位と幹部の経験が紹介され・・欠陥とその原因、克服方法が深度をもって分析された」
  • 会議の意義:「人民大衆第一主義を徹底して具現し、人民のために存在し、人民のために服務する社会安全機関の性格と本態を確固として堅持し、分駐所の活動性を非常に高める・・重要な契機」

 「分駐所」は、社会安全部(警察)の末端機関であり、我が国の派出所に相当する組織といえよう。その長を集めて12年ぶりに開催された今次会議で注目されるのは、何と言っても、「人民への服務」が繰り返し強調されたことであり、社会安全部門における「人民大衆第一主義」の実践促進が会議開催の主たる狙いであったといえよう。

 そうした強調の裏面には、社会安全部員自身による住民への専横的行為・職権乱用などに対する戒めが含まれていると考えられる。

 また、具体的な方法論としては、前掲1⃣~③の課題からうかがうことができるように、勤労団体(女性同盟、青年同盟など)と連携した遵法活動(そこには、これら団体構成員による「糾察隊」などの活動も含まれるのであろう)をはじめとして、事故・災害の防止活動やいわゆる地下経済活動の取り締まりなどが重点になっているようである。

 そこで特徴的なことは、「我が社会の政治的安全は、人民大衆の高い熱意と無限大の力に依拠して固く守られる」との考え方を基礎に「住民の自覚」を重視していることであり、単なる力・恐怖による治安の維持ではなく、人心の収攬による体制の安定に腐心していることが改めてうかがえる。そうであるからこそ、人心離反につながりかねない治安機関の専横を戒めているのであろう。