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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年8月31日 最高人民会議常任委員会第14期第27回全員会議の開催を報道

 

 本日の「労働新聞」は、標記会議が8月30日、崔竜海常任委員長の「司会」により開催され、最高人民会議第14期第9回会議の招集(9月26日)、「国家表彰法」、「生産力配置法」などの制定、「各級人民会議代議員選挙法」の改正を決定したことを伝える朝鮮中央通信の記事及び「最高人民会議招集に関する公示」を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 最高人民会議第14期第9回会議の招集:招集日9月26日。討議内容は①障碍者権利保障法、灌漑法、公務員法の審議採択、②金融部門の法執行状況総括、③組織問題
  • 「国家表彰法」制定:「党と国家、祖国と人民のため特出した功労を立てた対象を高く評価・称揚し、大衆の政治的熱意と創造的積極性を発揚させ、社会主義建設を促進」
  • 「生産力配置法」制定:「生産力配置事業における制度と秩序を厳格に立て、国家経済の持続的で均衡的な発展を保障し、人民生活を安定向上させることに貢献」
  • 「検察機関組織法」制定:「検察機関の機能と役割をより高めることに目的を置き・・各級検察機関の組織と活動原則、事業体系と秩序など(を規定)」
  • 「観光法」制定:「国内観光を活性化すると同時に国際観光を拡大し観光客の便宜を保障し、生態環境を積極的に保護」(などを規定)
  • 「商品流通法」制定:「商業網の組織運営と商品の確保、供給および販売をはじめとした商品流通全般に対する国家の組織統制力をより強化
  • 「各級人民会議代議員選挙法」修正補充:「選挙委員会の組織原則と代議員候補者に対する推薦及び登録と選挙宣伝、投票及び投票結果の確定、禁止事項と関連した内容」

 以上の決定内容のうち、最高人民会議第14期第9回会議の開催は、例年この時期に恒例のものといえる。審議内容に関しては、「公務員法」の制定が注目される。先の金正恩の行政経済幹部に対する叱責などを受けて、「人民の忠僕」としての位置づけなどを強調する内容になるのではないだろうか。また、「組織問題」では、その叱責の矢面に立たされた金徳訓総理の交代が決定される公算が大であろう(ただし、本日の「労働新聞」掲載の「殷律鉱山西海里分鉱山竣工式開催」の記事は、30日に開催された同竣工式出席者の筆頭に「(党政治局常務委員・国務委員会副委員長であり)内閣総理である金徳訓同志」の名前を挙げている。同人は、少なくとも現時点では、強制収容所に送られたりはせず、現職にとどまっている模様である)。

 法律の制定・修正では、「生産力配置法」(「生産力」が具体的に何を指すのか判然としないが)及び「商品流通法」などは、国家の統制力強化を目指すものであろう。「観光法」は、コロナによる国境閉鎖の全面解除に備えたものと思われる。

 「各級人民会議代議員選挙法」の改正は、先の党中央委第8期第8回会議における代議員選挙方法の改正に関する審議結果を反映したものであろうが、前掲説明内容からすると、複数候補者による実際的な選挙戦を前提にしたものであるとも解釈可能で、具体的にどのような選挙方法が採用されるのか、非常に関心がもたれる。