rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年11月21日 代議員選挙関連:崔竜海委員長「現地了解」、「出会い集会」を報道

 

 本日の「労働新聞」は、代議員選挙に関連して、「崔竜海委員長、地方人民会議代議員選挙準備事業を現地で了解」及び「各地選挙区において登録された代議員候補者と選挙者間の出会い集会開催」と題する記事を掲載した。

 崔竜海の「現地了解」は、「平壌市人民会議代議員選挙のための第79号区第1号分区、第89号区第90号分区、第106号区第112号分区」に対するものであり、「選挙において大衆が自分の意思を十分に表明するようにしなければならないと述べた」。また、「代議員候補者と選挙者の出会い集会を地域と単位の実情に即してしっかりと組織し、彼らの政治的自覚と愛国的熱意を伸ばし、最も人民的で民主主義的な我が国家社会制度の優越性と生活力を改めて鮮明に示す契機になるように」指示したとされる。更に、選挙事務関係者に対しては、「我が国家の存立と発展の礎石である一心団結を盤石に固めるための地方人民会議の代議員選挙において負っている任務の重要性」を強調したとされる。

 各地における「出会い集会」の記事では、「出会い集会は、選挙者との談話又は選挙者会議形式により、選挙区内の機関、企業所、洞、人民班単位で実情に即して行われている」、「代議員候補者たちは、出会い集会において選挙者たちと提起された問題を虚心坦懐に討論した」とされる。

 そして、そうした過程を通じて、「代議員候補者たちは選挙者たちの意見を十分に聞き、彼らの公正な評価の中で自分の事業を振り返りつつ党中央の崇高な人民観を体質化し、国家発展と人民の利益実現のため一つでも有益で立派な仕事を探して行い・・栄誉を輝かして行く道があることを深く自覚した」と報じ、「出会い集会を契機に代議員候補者たちは新たに修正補充された選挙法に込められた党と国家の人民大衆第一主義理念を改めて心に刻(んだ)」としている。

 以上のような一連の報道からは、今次選挙法改正の狙いが、選挙者(一般人民)に対して、政治の「主人」であることを実感させ、国家活動に対する積極的な参加意欲を喚起することとともに、あるいはそれ以上に、代議員候補者、すなわち幹部に対して、社会末端の実情への認識を深め、自らの地位が人民の付託によるものであることを実感させ、「官僚主義」的姿勢を改める契機を与えることにあることがうかがえる。

 なお、「出会い集会」の開催単位として挙げられている「人民班」は、30世帯前後で構成されているとされ(『北朝鮮入門』159ページ)、文字通り「草の根」レベルで、こうした活動が実施されていることもうかがえる。

 このたび北朝鮮がこれほどの措置を講じた背景には、そうでもしないと「我が国家の存立と発展の礎石である一心団結」が揺らいでしまう、あるいは既に揺らぎつつあるとの危機感が存在したのではないだろうか。