2023年11月22日 偵察衛星の打ち上げに成功と報道
本日の「労働新聞」は、標記に関する「国家航空宇宙技術総局報道」を掲載した。その骨子は、次のとおりである。
- 発射概況:国家航空宇宙技術総局は、・・11月21日22時42分28秒に、平安北道鉄山郡西海衛星発射場で偵察衛星「万里鏡―1」号を新型衛星運搬ロケット「千里馬―1」型に搭載して成功裏に打ち上げ・・22時54分13秒に偵察衛星「万里鏡―1」号を軌道に正確に進入させた」
- 発射の意義:「(同)偵察衛星の打ち上げは、・・・合法的権利であり、敵の危険極まりない軍事的蠢動によって国と周辺地域に生じた安全環境に合致するように共和国武力の戦争準備態勢を確固と向上させるのに大きく寄与する」
- 金正恩参観:「金正恩同志が、現地で偵察衛星の打ち上げを参観(金正植党軍需工業部副部長、張昌河ミサイル総局長が同行)し・・国家航空宇宙技術総局と関連機関の全ての幹部と科学者、技術者を熱烈に祝賀した」
- 今後の予定:「国家航空宇宙技術総局は、今後、早い期間内に数機の偵察衛星を追加発射・・する計画を党中央委員会第8期第9回総会に提出する」
今次偵察衛星の打ち上げは、失敗に終わった5月31日、8月24日に次ぐ3回目のものであり、上記報道のとおり「成功」したのであれば、前2回の「雪辱」ということになる。
「今後、早い期間内に数機の偵察衛星を追加発射」するとしており、それが完成すれば、北朝鮮も、「南朝鮮地域と共和国武力の作戦上の関心地域」に対する、それなりの衛星情報収集能力を備えることになろう。とはいえ、それは、日米韓などが有する北朝鮮に対する情報収集能力に比較するとはるかに劣るものでしかないことはいうまでもない。
そういう意味で言えば、今次発射がそれほど重大な意義を有するものとも考えにくく、我が国報道の大騒ぎぶりは不可解でしかない。
むしろ、今次発射がもたらした最大の影響は、韓国がそれを契機に(はっきり言えば、それを奇貨として、待ってましたとばかりに)、文在寅政権当時(2018年)に締結した「9・19南北軍事合意」の効力一部停止を決定したことによって、北朝鮮の反応の不透明性が高まったことにあるといえよう。
今次発射は、そうした経緯を経てではあるが、結果として、南北間の、あるいはそれを超えてこの地域の不安定性を大いに高める契機になるのではないかと危惧される。