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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年11月25日 金正恩平壌総合管制所再訪問を報道、社説でも「偵察衛星」をアピール

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩が24日、国家航空宇宙技術総局平壌総合管制所を訪れ(金正植党副部長同行)、偵察衛星の運用準備状態を了解したことを報じる記事を掲載した。同記事が伝える金正恩の同所における具体的な活動は、次のとおりである。

  • 報告を受けた事項:①「偵察衛星の軌道進入後62時間の間に行われた精密操縦内容と衛星の現在任務遂行状態」、②「25日午前の敵側地域に対する撮影計画と偵察衛星に対する追加操縦計画」
  • 「了解」事項:「(偵察衛星が)24日午前10時15分から10時27分の間に・・・敵側地域の木浦、群山、平沢、烏山、ソウルなど主要標的地域と我が国(北朝鮮)の諸地域を撮影した写真資料」

 同記事は、比較的簡潔なもので、金正恩の視察時の発言などは報じていないが、金正恩が打ち上げ直後の22日に続いて再度、同管制所を訪問したことは、「偵察衛星」に対する金正恩の思い入れの強さを改めて示すものであると同時に、「偵察衛星」の成果を国内にアピールする狙いも込められていると考えられる。

 そうした狙いは、本日の「労働新聞」の社説「偉大な党の領導にしたがって必勝の信念高く全面的国家復興のための進軍を一層加速化しよう」からもうかがうことができる。同社説は、冒頭で、「偵察衛星『万里鏡1』号機が新型衛星運搬ロケット『千里馬1』型に搭載されて成功裏に発射された爽快な報せは全国を歓喜と激情で強く沸き立たせている」とした上で、「我々は、今日の誇らしい事変をもたらした宇宙科学研究部門の科学者、技術者たちの闘争精神、闘争気風に積極的につき従い、党大会決定貫徹において大革新、大飛躍を起こしていかなければならない」、「皆が尊厳高い強国の公民らしく世界的眼目と大国的自尊心により社会主義強国建設の戦区ごとに新たな革新、大胆な創造、不断の前進の機運をより高潮させなければならない」などと訴えている。

 ただし、社説のそうした主張とは裏腹に、今日の紙面でも、衛星発射成功に対する「反響」はまったく報じられていない。むしろ、市民への影響について喧伝されているのは、明日に予定されている地方人民会議の代議員選挙である。指導部としては、新方式での選挙実施に加えた衛星成功による相乗効果を期しているのかもしれないが、果たしてどれほどの結果をもたらすのであろうか。