rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年12月22日 最高人民会議常任委員会第14期第29回全員会議の開催を報道

 

 本日の「労働新聞」は、標記会議が12月21日、崔竜海委員長の「司会」の下、開催されたことを伝える朝鮮中央通信の記事及び同委員会の「決定」、「公示」を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 最高人民会議第14期第10回会議の招集:来年1月15日に招集。同会議では、「2023年国家予算執行の決算と2024年国家予算に対する問題を討議する」
  • 「教育後援法」の制定:「教育部門に対する後援制度の秩序を立て、全国に教育事業を積極的に支援する社会的気風を確立するための法的要求を規定」
  • 「人民班組織運営法」:「人民班を和やかな一つの大家庭として整える上で提起される原則的問題を具体的に明示」

 このうち、最高人民会議第14期第10回会議の招集は、近年、年初に最高人民会議を開催し、前年度国家予算の総括と当年度予算の策定を行うことが恒例化しており、それに即したものである。予算関連以外の議題は示されていない。

 なお、第14期の最高人民会議代議員選挙は2019年3月に行われていることから、5年の任期満了を迎える来春にはおそらく第15期の代議員選挙が実施され、その直後に第15期第1回会議が開催されるものと思われる。同選挙は、当然、先般の地方代議員選挙と同様、新たな方式で実施されるのであろう。

 次に、新たに制定された「教育後援法」については、従前から行われていた各地学校に対する当該地域所在機関・企業所などによる「後援」活動、具体的には各種教育機材の寄付などの行為をより制度的に実施することを目指すものと思われる。国家財政の力の及ばない教育基盤の底上げをいわば「民活」で実現しようとするものとも言えるが、端的に言えば、当局の「責任転嫁」、地元への「丸投げ」に近いのではないだろうか。

「人民班組織運営法」については、地方行政の事実上の最末端単位となっていた「人民班」を公式化するものであろうが、下線部の説明などを見るに、その方向性として、単に従前からの当局の指示の伝達・実行確保や住民の動向把握といった統制的機能の強化にとどまらず、住民の相互扶助などの活動を称揚し、「共産主義社会」の実現に資するとの長期的眼目が込められているのではないかと考えられる。