rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年4月24日 外務省室長、金予正が米韓非難の談話を発出

 

 本日、朝鮮中央通信は、外務省報道局対外報道室長及び金予正が同日、それぞれ談話を発表したことを相次いで報じた。各談話の骨子は、次のとおりである。

ア 外務省報道局対外報道室長談話

  • 「22日、米国務省のスポークスマンは朝鮮民主主義人民共和国の自衛的軍事訓練について国連安保理の「決議違反」「威嚇」と言い掛かりをつけて国際的対応を云々した」が、「核反撃想定総合戦術訓練は、朝鮮半島地域の軍事的緊張を一方的に高調させる米国と大韓民国に明確な警告信号を送るもので、戦争の勃発を抑止するための正当な自衛権行使となる」
  • 「我々は、米国が冷戦式の考え方にとらわれて排他的な軍事ブロックを形成し、陣営対決を追求して他国の戦略的安全を害することに断固反対する」
  • 「正当防衛力の強化が不法に罵倒される不正常な行為が慣習化されていることについて絶対に黙過しないであろうし、より強力で明白な行動で自己の主権的権利と合法的利益をしっかり守っていく」
  • 「国際社会は、・・米国と大韓民国に挑発的な対決行為を直ちに中断することに関する明白な信号を発信すべきであろう」

イ 金予正談話:「盗人猛々しい無理押しはわれわれに通じない」

  • 「米国は、・・我々の自衛権に該当する活動に対して・・紋切り型の無理押し主張をして盗人猛々しく振舞っている」
  • (1月以来の米韓合同軍事訓練について詳細に言及した上で)「今年に入って現在まで、米国が手先らと共に行った軍事演習は80余回、韓国かいらいが単独で強行した訓練が60余回にもなるという事実を見ても、地域情勢悪化の主犯が果たして誰なのかがはっきり分かるであろう」
  • 「米国が引き続き手先らをかき集めて力を自慢し、我が国家の安全を脅かそうとするなら、米国と同盟国の安保はより大きな危険に直面することになるであろう」
  • 「最近になって韓国かいらい軍部ごろの頭目らが度を過ぎて言い散らしている。上司を信じて奔走し、我々を相手に武力対応を試みようとするなら、あの連中は即時壊滅するであろう」

 両談話は、共に、北朝鮮が22日に実施した「核反撃想定総合戦術訓練」に対する米国の批判に反論する形で、同訓練が米韓の合同軍事訓練により生じた情勢悪化に対応するための「自衛権」行使であるとして、その正当性を主張するとともに、今後の米韓の出方を牽制したものといえる。

 ただし、金予正談話は、その米韓の合同軍事演習について今年1月以降の実施状況を詳細・具体的に論じるとともに、米韓に対し、それぞれ強い口調での牽制を加えているのが特徴的といえる。

 これに対し、外務省対外報道室長の談話は、米韓合同軍事演習についての具体的言及は省く一方、「国際社会」に対し、北朝鮮の立場への同調を訴えている。また、「排他的な軍事ブロックを形成し、陣営対決を追求して他国の戦略的安全を害することに断固反対」との文言は、朝鮮半島というよりも、むしろ米中対立の文脈に適合する主張のようにも思える。

 いずれにせよ、こうした主張の内容は、北朝鮮の従来の立場の繰り返しであり、何ら驚くべきものではない。

 しかし、一つの出来事に対し、こうして二つの談話が発出されるという北朝鮮政権内部のメカニズムがどうなっているのかについては関心がもたれる。とりわけ、外務省が「室長」という比較的低いランクで対応しれきたのに対し、金予正が続くというのは、何か「格」がそろわないといった印象をいなめない。誠に不可解である。