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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年10月1日 外相、外務副相が相次いで談話を発表

 

 朝鮮中央通信によると、崔善姫外相が9月30日、北朝鮮憲法への核開発政策規定の正当性を主張し、それに関する国連安保理での非公開審議を非難する談話を、任天一外務省副相が10月1日、朝ロ関係に対する米国の批判に反論する談話を、それぞれ発表した。これら談話の骨子は、次のとおりである。

ア 崔善姫外相談話

  • 「9月29日、米国とその追随諸国は国連安保理の非公開協商を招集して、朝鮮民主主義人民共和国の神聖不可侵の憲政活動と自衛的国防力強化措置を非難する醜態を演じた」ことに対し、「共和国の自主権に対する正面切っての挑戦、主権国家の内政に対する露骨な干渉とらく印を押して強く糾弾、排撃する」
  • 「責任ある核保有国としての共和国の法律的地位を最高の水準で固着させたのは、朝鮮民主主義人民共和国の国家防衛力強化と国威向上のための歴史的過程における必然的帰結である」
  • 保有国地位の憲法化は単に、国家最高法典の条項を修正、補足する改憲活動ではなく、朝鮮民主主義人民共和国の富強・繁栄のための万年の大計を保証し、核主権守護の強力な法律的武器をもたらしたところに重大な意義がある」
  • 「米国とその追随勢力が朝鮮民主主義人民共和国に対する核兵器使用を政策化、制度化するのに対処して、われわれが国家安全保障において核の役割を強め、その法律的、制度的地位を強固なものにするのは、誰もけなせない主権国家の自主的権利である」
  • 「米国をはじめとする敵対勢力がわれわれに非核化を強要して核保有国としてのわが国家の憲法的地位を否定したり、侵奪しようとしたりするなら、それはすなわち憲法放棄、制度放棄を強要する最も重大な主権侵害、違憲行為に見なされる」

イ 任天一副相談話

  • 「最近、米国は朝露両国の善隣友好関係の発展を国連「決議違反」「国際法違反」として根拠もなく言い掛かりをつけて、朝露協力が世界の平和と安全に対する「脅威」であるかのように世界の世論を惑わしている」
  • 「朝露両国首脳の戦略的決断に従って、新たな高い段階へと昇華され、発展している朝露関係は、帝国主義者の強権と専横、軍事的威嚇と干渉を抑止するための平和守護の強力なとりでであり、戦略的よりどころである」
  • 「朝露関係に対する米国の悪意的な拒否感は、彼らが反帝・自主的な国々との対決で力と手段が足りないということを自らさらけ出すだけである」
  • 「不正義の代表的実体である米国の対朝鮮、対ロシア敵対的言行は、朝露関係の発展こそ自主的で平和な新世界を建設し、真の国際的正義を実現するための正当な道であることを改めて明白に反証している
  • 朝鮮民主主義人民共和国は、ロシア連邦をはじめ自主的な主権国家との伝統的な友好・協力関係をより一層拡大、発展させることで、帝国主義者の軍事的威嚇と挑発、強権と専横を抑止し、朝鮮半島地域と世界の平和と安全をしっかり守っていくであろう」

 これらの談話の趣旨は、いずれも従来の主張の延長線上のものとも言えるが、憲法への核開発政策既定の盛り込みや朝ロ関係緊密化の意義を対外的にいかに説明するかを示すものとして紹介した。

 また、善姫外相談話では、憲法への核規定を根拠に、非核化要求が「憲法放棄、制度放棄を強要する主権侵害」になると主張しており、憲法への核規定の対外的狙いの一端をうかがわせている。任天一副相談話では、最近の朝ロ関係に対する米国の批判について、米国の弱さ、焦りの反映ととらえ、そうした意味で、これを促進する姿勢を示している点が注目される。

 前者の主張は強弁に過ぎないが、後者の主張には一定の説得力を認めざるを得ないように思われる。朝ロの交流を批判すればするほど、彼らにその戦略的価値を実感させるのではないだろうか。