rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年6月4日 金予正が国連安保理での衛星打ち上げ討議非難の談話を発表(国際海事機関には国際問題評論家名義で非難)

 

 本日の朝鮮中央通信は、標記に関する金予正の談話(6月3日付け)を報道した。その骨子は、次のとおりである。

  • 「国連安保理が米国の強盗さながらの要求に従って朝鮮民主主義人民共和国の衛星の打ち上げ権利を単独案件に取り扱う会議を行うこと」に対して、「大変不快に思い、これを最も不公正かつ偏見的で、内政干渉的な主権侵害行為と強く糾弾、排撃する。我々の正当な主権行使を国連安保理に上程させたこと自体が我々の主権に対する露骨な無視であり、蹂躙(じゅうりん)であり、侵害である」
  • 「10余年前につくり上げられた不法非道で不公正な対朝鮮『制裁決議』条項に盲目的に従いながら朝鮮民主主義人民共和国の自主権と生存権、発展権を一方的に抑止しようとするのは・・極めて危険な行為である」
  • 朝鮮民主主義人民共和国の軍事偵察衛星の打ち上げはすでに限界線を超えた米国とその追随勢力の軍事的威嚇に対処した当然な対応措置であり、自主権と領土保全を守るための正当防衛権行使である」
  • 「我々は、米国とその追随勢力が飽き飽きする時まで、自分らの選択が誤ったことを自認する時まで終始一貫して強力対応するであろう」

 また、朝鮮中央通信は、同日、「ホワイトハウスの操縦によって動く組織に転落した国際海事機関」と題する「国際問題評論家金明哲」名義の論評(6月4日付け)を報じた。その骨子は、次のとおりである。

  • 国際海事機関海上安全委員会第107回会議は、米国とその追随勢力の対朝鮮敵視政策に追従してわが国家の自衛的国防力強化措置を「国連安保理の決議違反」「国際海上安全に対する脅威」と罵倒する『決議』を強圧採択した」
  • 「(こうした)決議がつくり上げられたのは国際海事機関海上安全分野の国際的協力を図る本来の使命を投げ捨てて、完全に政治化されたということを示している」
  • 「我々は、今回の軍事偵察衛星の打ち上げに関連して、同機関の規定通りに地域調整機関である日本海保安庁に航海警報を送り、義務的ではないが国際海事機関にも打ち上げの期間とキャリア・ロケット残骸物の落下地点について事前通報した」
  • 朝鮮民主主義人民共和国が打ち上げた衛星キャリア・ロケットの残骸物が海上安全に脅威となるなら、米国や南朝鮮が打ち上げるロケットの残骸物は海に落ちず、綿毛のように空にそのまま漂っているのか」
  • 国際海事機関が我が国の衛星の打ち上げ関連の事前通報に反朝鮮「決議」採択をもって応えただけに、我々は、これを我々の事前通報がこれ以上必要でないという機関の公式立場表明と見なす」

 以上の談話、論評ともに、基本的には、従前の主張の延長線上のものといえよう。ただし、金明哲の論評の最後の点は、今後の衛星打ち上げに際しては事前通告を行わないとの趣旨であるが、本当にそういう国際世論の一層の反発を招きかねない行動を取るつもりなのか、個人名義の論評として打ち出すことで今後の方針撤回の余地を残しているとも解釈できるだけに、真意が注目される。