rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年6月1日 金予正が衛星打ち上げに関し対米非難の談話発表

 

 朝鮮中央通信は、本日、「誰も衛星の打ち上げに関するわれわれの主権的権利を否定できない」と題する金予正名義の談話(6月1日付け)を報じた。

 同談話は、北朝鮮の衛星打ち上げに関し、米国の国家安全保障会議スポークスマンが行った批判に反論した上で、今後とも衛星開発などを続ける姿勢を誇示するものである。その注目部分は、次のとおりである。

  • 「どの国でも行っている衛星の打ち上げを巡ってその目的いかんにかかわらず、弾道ロケット技術の利用を禁止した国連安保理「決議」にかけてわれわれだけがしてはならないというそのような無理押し論理は、わが国家の宇宙利用権利を甚だしく侵害し、不当に抑圧する、確かに白昼強盗さながらで間違ったものである」
  • 朝鮮民主主義人民共和国の軍事偵察衛星は遠からず、宇宙軌道に正確に進入して任務遂行に着手するであろう」
  • 「われわれは、米国との対決の長期性をよく知っており、展望的な脅威や挑戦を意識して包括的な方面で戦争抑止力の向上に全てを尽くしていく」

 同談話の最大のねらいは、第1点目、すなわち、衛星打ち上げを主権国家の権利である「宇宙利用権」として位置づけ、その正当性を国際社会にアピールすることであろう。朝鮮中央通信が異例にも同談話に衛星打ち上げ時の写真を添付しているのも、それに使用されたロケットが軍事用のミサイルとは異なるものであることを殊更強調するためと考えられる。日本では、そのような主張こそ北朝鮮の「無理押し論理」と受け止められるしかないであろうが、国際社会全体を見れば、一定の説得力を持って受け止める国・勢力も少なからず存在するのであろう。

 一方、2点目については、今後の偵察衛星打ち上げ時期に関する表現が「遠からず」であって「近く」ではないことに留意すべきであろう。ここで「遠からず」の意味は、過去の使用例から判断して、何年も先ではないという程度と考えられる。

 また、3点目は、常套的な主張であって、特段の意味はないと思われる。

 なお、余談だが、金予正は、4月28日には「立場発表」と称して主張を展開したが、今次は従前の形式に復して「談話」と称している。ちなみに、5月30日には李炳哲の「立場発表」(29日付け)が報じられている。両者の間にどのような違いがあるのか、いまだよく分からないのが実情である。

 それと、本日の「労働新聞」は、昨日の衛星打ち上げ失敗に関する朝鮮中央通信の報道を掲載していない。朝鮮中央放送でも、これまでのところ、それに関する報道はないとのことであり、国内向けには、今次失敗については敢えて触れずにやり過ごすつもりのようである。