rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年5月31日 軍事偵察衛星打ち上げの失敗を公表

 

朝鮮中央通信は、本日、標記に関し、骨子次のような報道を行った。

  • 「国家宇宙開発局は、5月31日6時27分、・・軍事偵察衛星『万里鏡―1』号を新型衛星運搬ロケット『千里馬―1』型に搭載して打ち上げた」
  • 「『千里馬―1』は、正常飛行中、1段の分離後、2段エンジンの始動不正常によって推進力を失い、朝鮮西海に墜落した」
  • 「『千里馬―1』型に導入された新型エンジンシステムの信頼性と安全性が落ち、使われた燃料の特性の不安定に事故の原因があると見て、・・具体的な原因解明に着手する」
  • 「国家宇宙開発局は、衛星の打ち上げにおいて現れた重大な欠陥を・・克服するための科学技術上の対策を早急に立てるとともに、さまざまな部分試験を経て可及的速い期間内に第2次打ち上げを断行すると明らかにした」

 偵察衛星の打ち上げは、先般来、金正恩が繰り返し指導してきたものであるだけに、今次失敗は、少なくとも短期的には、同人の権威強化、更には国内の士気高揚という面で、非常に手痛いものであったと思われる。それにもかかわらず、こうして、その失敗を原因も含めて即刻公表したのは、ある意味で、「勇断」であり、欠陥の存在を敢えて隠さないという金正恩時代の一つの傾向を改めて示したものといえよう。いずれ成功の暁に、こうした失敗を克服して成功に至ったという、より感動的な筋書きを演出できればそれで可との思惑があるのかもしれない。

 ただ、次の打ち上げまでには、「さまざまな部分試験を経て」と言っていることからしても、一定の期間が必要であろう。それまでの間、権威回復ないし士気盛り上げを図るため、別の「目玉」を打ち出す可能性もあり、今後の動向には引き続き注視が必要と思われる。

 なお、昨日の本ブログで紹介した李炳哲の「立場発表」については、予想に反して、本日の「労働新聞」には掲載されなかった。そもそも、それほど国内向けの狙いが含まれていなかったのか、あるいは、衛星打ち上げの時期を「6月にほどなく打ち上げられる」としていたが、5月中の打ち上げが決定されたため齟齬が生じてしまったためなのか、よく分からない。いずれにせよ、打ち上げが失敗に終わったことから、結果的に「恥の上塗り」のようなことにならず、掲載しないでよかったということになるのであろう。

 ところで、今日の打ち上げ失敗に関する朝鮮中央通信の報道は、明日の「労働新聞」に掲載されるのであろうか。