rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年4月29日 金予正名義で米韓首脳会談等を非難

 

 本日の朝鮮中央通信は、金予正党中央委員会副部長が4月28日、同社を通じて「立場を発表した」として、次のような内容を報じた。

  • 尹大統領のワシントン訪問は、「朝鮮半島と地域の平和と安全を脅かす根源とその実体に対するなお一層の明白な理解を持てるようにする契機」となった
  • 「『ワシントン宣言』は、最も敵対的で侵略的な行動意志が反映された極悪な対朝鮮敵視政策の集約化した所産」であり、それらの結果は、「われわれに新しい安全環境に相応するより正常な行動に臨むべき環境を提供した」
  • 「(バイデン大統領が)『政権の終焉』という表現を公然と直接使ったこと」は、「老いぼれのぼけ」にとどまらず、「われわれが容易に見逃せないあまりにも途方もない後の暴風を覚悟すべき修辞学的威嚇である」
  • 「敵が核戦争演習に狂奔するほど、朝鮮半島地域により多くの核戦略資産を展開するほど、われわれの自衛権行使もそれに正比例して増大するであろう」

 この「立場」は、尹大統領の訪米に伴う米韓首脳会談、「ワシントン宣言」などに対する北朝鮮の公式的な反応を示したもので、概ね想定の範囲内のものと言えよう。

 また、「ワシントン宣言」で注目された対中関係の文言に対しては、少なくとも直接的には何ら言及していない。こうした対応は、G7外相会談に対する崔善姫外務相の「談話」(4月21日付け)でも同様であり、巷間、中朝の「関係深化」が指摘される中でも、中国のお先棒をかつぐようなことは自制していることには、注目すべきと考える。

 なお、従前、こうした場合、誰それの「談話」という形式であったのが、「立場を発表」という表現が用いられているのは、4月17日に李炳哲の「立場発表文」が報じられたのに続くものであるが、その後も、前述のとおり崔善姫外務相「談話」が発表されており、どういう使い分けになっているのか、判然としない。

 いずれにせよ、北朝鮮は、尹大統領の今次訪米で示された米韓の圧迫に対し、こうした言葉だけの反応で済ませるとも思えず、早晩、何らかの具体的活動をもって答えることが予測される。ただ、例年以上に重視すべき田植え時期が迫っていることもあり、その程度は、自ずと限定的なものとなるのではないだろうか。