rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年8月19日 金予正が尹錫悦非難の談話を発表

 

 本日の「労働新聞」は、「でたらめな夢を見るな」と題し、韓国尹錫悦大統領の「8・15(光復節)慶祝の辞」を非難する金予正党中央委副部長名義の談話(8月18日付け)を掲載した。

 同談話の最大の批判は、「われわれに向かってふさわしくもなく、せん越にも核開発を中断し、実質的な非核化へ転換するなら、いわゆる経済と民生を画期的に改善させられる「果敢で包括的な『大胆な構想』」を提案」したことに向けられており、これを「最もむかつく」と評している。

 同構想に対する批判の論点は、「『北が非核化措置を取るなら』という仮定からが間違った前提である」ことで、「われわれの国体である核を『経済協力』のようなものと引き換えようとする発想」自体が誤りであるというものである。この点については、「誰が自分の運命を餅などと換えようとするだろうか」との比喩も交えて繰り返し強調している。

 更に非難は、尹錫悦個人にも向けられ、「われわれは尹錫悦という人間そのものが嫌である」とし、「今後またどんな派手な構想を練って戸を叩くかは知らないが、われわれは絶対に相手しない」とまで断言している。

 その上で、同談話は、韓国側要人の「時を構わず無知に言い散らす対決的妄言」への反発・警告を表明するとともに、10日の全国非常防疫総括会議での「討論」で自らが行った「われわれを一切相手しないのが上策」との主張を繰り返している。

 談話は、最後に以上に付言する形で、「一日前(17日)に行われた我々の兵器(巡航ミサイル)試射地点は、南朝鮮当局が下手に軽々しく発表した温泉一帯ではなく、平安南道安州市の「クムソン橋」であった」と主張し、韓国側の探査能力を揶揄している。

 以上のような金予正談話の内容、とりわけ「大胆な構想」に対する反応は、従前の北朝鮮の主張からして当然予想されたものといえる。その意味で、尹政権がそうした「構想」を発表したことに対して、「相手がどう受けとめるか、また北南関係を知っている人々がどう評するかも、全く意に介さなかった」と評している点には、同感せざるを得ない。

 ただ、今後の提案に対しても、すべて「絶対に相手にしない」との部分は、現時点限りの修辞のように思われる。むしろ、大統領就任後、「2~3年は一生懸命に働いてこそ、初めて世間の道理、事情を読み取れる」と認識しているとすれば、その後の提案については、別途、検討・対応の余地が残されているようにも思われる。常に紆余曲折を繰り返してきた過去の南北関係の経緯からしても、今次談話の表現だけから、そうした可能性まですべて排除するのは早計と思われる。

 いずれにせよ、当分の南北関係進展は見込めないところだが、そうした中で無用な緊張激化を防ごうとするのであれば、相手の反発を招くような「提案」を繰り返すよりは、むしろ「対決的妄言」を避けるのがまさに「上策」であろう。