rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年8月19日 金正恩、コロナ防疫に出動した人民軍医務部門将兵を祝賀

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩が8月18日、平壌市内「4・25文化会館」において、コロナ防疫に出動した人民軍医務部門将兵を集めて演説を行うとともに、記念写真を撮影するなどして彼らを「祝賀激励」したことを伝える記事及び同演説の全文と数葉の記念写真を掲載した。

 金正恩の演説は、終始一貫して参加者のコロナ防疫活動における献身、功労を称賛・評価し、「党と祖国、人民の名前で同志たちに熱い感謝を捧げ(る)」ものであった。

 そういうわけで演説は、出動兵士の献身事例が様々紹介しているが、中でも注目されるのは、「父母が送ってくれた現金を惜しむことなくはたいて、困難な世帯に主副食物を分け与えた行い」と「病気で苦労しつつも献身の道を躊躇なく進む中で犠牲となった指揮官、隊員たち」がいたことである。とりわけ、前者は、兵士が父母からの支援を受けて生活していること及び平壌市内にも食料に窮する貧困家庭が存在することをうかがわせる内容といえる。

 また、演説では、今次活動結果も踏まえつつ、「軍医部門の現代的発展と戦闘準備完成が戦争遂行に占める意義」を強調し、「林春秋軍医大学」の機能強化や「野戦治療方法をより研究完成し、医療設備と機材を現代化する」ことなどを訴えている。ウクライナ戦争でロシア軍の医療体制・機材の貧弱さが指摘されているところでもあり、あるいは、そうした点も念頭においているのかもしれない。

 概して金正恩の演説は琴線に触れるものが多いが、この演説もその例外でない。更に、集会では、金正恩が特に功労の大きい将兵を表彰し、一人一人と握手したことも伝えられている。今次活動は、平素は戦闘部門に比して「日陰」に置かれがちな軍内の医務部門を「祖国保衛の最前線」に立たせ、こうして金正恩から直々の顕彰を受ける機会を与えたことになり、今後の体制・装備充実のお墨付きも得られたことになる。関係者は、頑張った甲斐を実感しているのではないだろうか。