rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年7月17日 金予正がまたも談話発表

 

 朝鮮中央通信は、17日、金予正副部長の同日付け談話を報じた。その骨子は、次のとおりである。

  • 「(今次談話では)米国が世界に向かってそれほど訴える「前提条件のない対話」と「外交の門が開かれている」ということがどんなに荒唐無稽なのかを明らかにする」
  • 「(仮に米朝対話が実現しても)米国が対話の場で我々にプレゼントできるものは(連合軍事訓練の縮小や戦略資産展開中断はもちろん、南朝鮮駐屯米軍撤退にしても)全て可変的かつ可逆的なものだけである」
  • 「その可逆的な性格を帯びる公約を信じて(「CVID」受諾など)我が国家の永遠な安全を当面の利益と取り換えることができるのか?
  • 「いくら前大統領が署名し、公約したものだとしても新しい政府が発足すればそれを自分の手のひらのようにひっくり返すのがまさに、アメリカ合衆国と「大韓民国」である」のだから、「我々は、尹錫悦やバイデンのようないかなる個人を相手にして戦略を駆使するのではなく、・・圧倒的な抑止力に基づいて朝鮮民主主義人民共和国の展望的な安全保証システムを構築しなければならない」
  • 「現在、朝鮮半島の平和と安定を保障することのできる最も適当な方途は強盗さながらの米国人と対座して仲良く問題を解決するのではなく力の地位で、十分な実力行使で彼らの強権と専横を抑止することである」

 同談話は、仮に米国が「南朝鮮駐屯米軍撤退」を約束しても、それは可逆的なものであるから、それを条件に非可逆的な非核化に応じることはできない、今、北朝鮮がすべきことは、米国との交渉ではなく確固たる抑止力の構築であると主張するもので、相当強硬な立場の表明といえる。

 このような談話発表の狙いとして考えられるのは、①北朝鮮の核戦力整備の正当性を国際的にアピールする、②国内(外務省?)に潜在する「対米交渉期待」を封殺する、③米国に対し、北朝鮮への要求を自国が提供できるものと同じく可逆的なもの(例えば、核実験・ICBM発射の凍結など)にレベルダウンした上での交渉を促す、の3点である。

 このうち、①が最も一般的な解釈であろうが、敢えて②ないし③を上げたのは、6月24日に発表された外務省米国担当局長の談話(同日付け本ブログ参照)において、(うがちすぎかもしれないが)米朝双方の信頼醸成措置的な交渉の可能性示唆がうかがわれたからである。ただし、②は今次談話をそうした動きを牽制するためのものと、③は後押しするためのものとみなす解釈である。

 いずれにせよ、このところ、金予正の「活躍ぶり」が目につくが、その背景は何だろうか。それも気になる。