rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年3月7日 米韓合同演習批判の談話を相次いで発出

 

 北朝鮮は、このところの米韓による合同軍事活動の活発化を受けて、これを批判・牽制する談話を相次いで発出している。

 まず、3月4日付けの、金鮮京(音訳)外務省国際港担当副相談話は、そうした米韓の行動を紹介した上で、国連及び国際社会に対して、それへの批判を訴えた。その骨子は、次のとおりである。

  • 米韓は、戦略爆撃機「B1B」や無人戦闘攻撃機「MQ9リーパー」などを動員して、本年に入って4回目の連合空中訓練を実施、「拡張抑制手段運用演習」を行って、我が国家の「政権終末」を云々する報道文を発表、我が国の主要縦深戦略拠点に対する奇襲打撃を目的とした特殊戦訓練を実施するなどしている。
  • 遺憾なことは、国連がこうした米韓の「明白な主権侵害行為と火薬の匂いの強い武力行動に対しては終始一貫沈黙していることである」
  • 「(こうした)修辞学的脅迫発言と誇示性軍事行動を続けるならば、地域の軍事政治情勢は非常に危険な統制不能状況へとより近づくだけである」
  • 「米国と南朝鮮の反平和的な行為をこれ以上黙過してはならない。国連と国際社会は、・・米国と南朝鮮の挑発的言動と合同軍事演習を即刻中断することについて強力に要求するべきである」

 3月6日付けの外務省報道局対外報道室長談話も、その後の展開を踏まえて緊張の高まりを強調しつつ、以下のとおり、同旨の主張を繰り返している。

  • 今日、米戦略爆撃機「B52」が飛来し、今年5回目となる連合空中訓練を実施した。「今次訓練は、我が国を対象とした米国の核使用企図が実戦水準において推進されていることを明白に示している」・・「朝鮮半島における核戦争勃発危険は、仮想的な段階から現実的な段階へと移行している」
  • 「米国の挑発的軍事行動は、数日後に開始される大規模米国南朝鮮合同軍事演習の侵略的性格とそれにより招来される破局的な情勢激化の厳重性を予告している」
  • 「我々は、・・米国と南朝鮮の無責任で憂慮すべき武力示威策動に強い遺憾を表示し、・・軍事的敵対行為を遅滞なく中止することを強力に要求する」
  • 「国際社会は、・・米国と南朝鮮に戦争演習を直ちに中断することについての明白な信号を送らなければならない」

 そして、本日(3月7日)、金予正副部長談話が発表された。同談話は、北朝鮮ミサイルに対する迎撃を強くけん制すると共に、米韓の軍事活動への北朝鮮の対応を誇示するものとなっている。

  • 米インド太平洋司令官の北朝鮮ミサイルが太平洋に発射されれば即刻撃墜するとの発言が報じられていることに言及した上で、「公海と空域で周辺諸国の安全に全く危害がなく行われるわれわれの戦略兵器実験に迎撃のような軍事的対応が伴う場合、これは言うまでもなく朝鮮民主主義人民共和国に対する明白な宣戦布告と見なされる」
  • 「われわれは米軍と南朝鮮かいらい軍部の活発な軍事的動態をもれなく注視、掌握しているし、判断によっていつにでも適切で迅速であり、圧倒的な行動が取れる常時的準備態勢にある」

 総じて見ると、外務省高官の二つの談話は、事実を適示して米韓側の「挑発」を浮かび上がらせつつ、自らによる対抗措置などには言及しないで北朝鮮委に対する国際社会の理解を得ようとの狙いが強く感じられる。それに比すると、金予正の談話は、やや論旨不明といわざるをえない。

 いずれにせよ、これら談話は、「数日後に開始される」米韓合同演習を念頭においたものといえよう。とりわけ、外務省談話は、同演習の後に、これまで度重なる警告を行い、隠忍自重を続けていたにもかかわらず、それを無視してこうした大規模な演習が実施された以上、それに対抗し国家を自衛するため、やむなく「〇〇」を選択するのやむなきに至った、という発表をするための事前準備のような気がしないでもない。〇〇に何が入るのかは、予測しがたいが、「核実験」となる可能性も無視できないと考える。