rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年8月11日 米韓合同軍事演習非難を加速

 

 本日の「労働新聞」は、昨日発表された「金予正朝鮮労働党中央委員会副部長談話」を掲載した。また、昨日の朝鮮中央放送も、同談話をテレビ報道した。

 更に韓国の報道によると、昨日午後からは、南北の連絡通信線への北側の応答が途絶えたという。

 加えて、本日、朝鮮中央通信が「金英哲朝鮮労働党中央委員会(統一戦線)部長談話」を報道した。

 同談話は、冒頭、「南朝鮮当局」が「朝鮮半島の平和と安全を望む全民族と内外の一様の期待の中で苦心して準備された反転の機会を無視して」米韓合同軍事演習を開始したことを指摘した上で、8月1日付けの金予正談話について、「党中央委員会の委任により」、同演習の実施を警告することによって、「南朝鮮当局に明らかな選択の機会を与えた」ものであったと意味付け、今次演習の開始は、「同族との和合ではなく外勢との同盟を、緊張緩和ではなく緊張激化を、関係改善ではなく対決という道を選択したもの」と決めつけている。

 そして、北朝鮮の今後の対応については、「我々の善意に敵対行為で応えた代価について正しく知らしめなければならない」「南朝鮮と米国が変わりなく我が国家との対決を選択した以上、我々も別の選択をすることはできない」「我々は、我々がするべきことを中断なく進行させていくであろう」として、具体的な内容への言及は避けつつも、強硬な対抗策の実施を示唆している。

 昨日の金予正談話発表以来の一連の動きは、北朝鮮側が、今後、韓国ないし米韓に対する姿勢を硬化させることを強く示唆するものといえよう。

 結果的にいうなら、先の南北連絡通信線の復元は、北朝鮮としては、米韓側の真意を測るリトマス試験紙を差し出したものであったとも考えられる。仮に、それを契機として米韓側が合同軍事演習を中止すれば、大いなる外交成果であり(特に金予正談話が効果を発揮したことになる)、関係改善の方向でそれなりの対応を模索すればいいし、逆に演習を中止しなければ、今回のように米韓側に緊張激化の責任を負わせ、自らの軍事力整備を正当化できることになる。どちらに転んでも損はないという計算が働いていたとも考えられる。

 一方、文政権は、直後に予定されていた合同軍事演習への対応をしっかり調整しないまま(国内ないし米国との間でも、北朝鮮との間でも)、「連絡通信線復元」という目先の成果を急ぎ、「画面での首脳会談」などの夢物語まで語った挙句、規模縮小しての演習実施という中途半端な対応で、国内保守層からの批判のみならず与党内部の亀裂まで露呈させ、北朝鮮からも「背信」をなじられ、連絡通信線もわずか2週間で再度途絶という結果を招いた。

 さて、これから北朝鮮がどのような対応を繰り出してくるのか、誠に興味は尽きない。