rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年2月17日 外務省代弁人談話で国連安保理、米韓演習を牽制(18日記)

 

 朝鮮中央通信は、2月17日、同日付の外務省代弁人談話を報じた。その骨子は、次のとおりである。

  • 去る1月、米国は、「少なからぬメンバー国の反対意見を無視したまま(国連)安全保障理事会会議を強圧招集した」。これは、安保理を悪用しようとする「米国の策動がこれ以上許容できない極端に至っているというということを示している」
  • 「今年に入って我々は・・正常的な国防力強化日程以外はいかなる特定の軍事的行動措置も自制している」。一方、米韓は、「連合空中訓練を3回も実施し」、米日韓の「3角軍事共助体制を一層強化することに合意した」。また、米韓は「今年中に20余回の各種合同軍事演習を計画し、規模と範囲を歴代最大規模の野外機動戦術訓練水準で展開しようとしている」
  • 安保理が、「(以上のような)米国と南朝鮮の度を超えた行動に対しては・・正誤をまったく論じることなく、これを抑制するための我々の正当で合法的な自衛権行使に対してだけ問題視することは、・・我々が必ず対応せざるを得ない敵対行為である」
  • 「万一、国連安全保障理事会が今後も今のように米国が望むとおり動き回る場合・・国連安全保障理事会に対する抗議として正常的な軍事活動範疇外に追加的な行動措置を再考せざるを得なくなるであろう」
  • 「(米韓が)訓練構想を既に発表したとおり実行に移すなら、今までに見たことのない持続的で前例のない強力な対応に直面することになるであろう」

 以上のような同談話の狙いは、二つあると考えられる。一つ目は、今後、国連安保理北朝鮮に対する非難決議などを採択することを牽制・予防することである。「正常的な軍事活動範疇外の追加的な行動措置」というのが具体的に何を意味するのか判然としないが、いずれにせよ、そうした曖昧・不気味な予告をすることで、今後の安保理での協議の際に、中国、ロシアなどが「北朝鮮を刺激するとむしろ緊張激化につながるおそれがある」といった主張を行う上での根拠とすることを企図しているのであろう。

 二番目は、米韓の今後の合同演習に対する牽制・警告である。ただし、こちらは、こうした談話を出したからと言って、米韓が「既に発表したとおりに実行に移す」ことを再考するとは思えず(北朝鮮もそれを期待はしていないであろう)、むしろ、今後それが実行された場合に採る対抗措置について、こうした警告をしたにもかかわらず、米韓がそれを無視して演習を敢行したことに対する正当、不可避な措置であるとの主張を行うための事前準備の狙いが強いと考えられる。そうだとすると、その場合の「今までに見たことのない持続的で前例のない強力な対応」とは何かが注目されるが、「前例のない」という以上、核実験ではなさそうである。「持続的」という表現からすると、軍事的態勢を何らかの形で強化するようなことを示唆しているとも思えるが、これも判然としない。ただ、来月には米韓演習があるようなので、北朝鮮としては、既に、何らかの具体策を策定した上で、こうした発表を行ったと考えるべきであろう。

 なお、同談話は、これまでのところ、「労働新聞」はじめ国内的には報道されていないようである。