rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年2月16日 社説「偉大な領導者金正日同志の聖なる愛国業績は富興強国建設史とともに永遠不滅である」

 

 標記社説は、金正日生誕81周年に際したもの。前段では、同人の業績を次のような面から諸々称賛している。

 第一は、「非凡な叡智と非常な探求力で我が祖国の強盛繁栄のための不滅の思想理論的財富を準備された」ことである。ただし、その中身については、「先軍」はじめ具体的な言及はなく、「社会主義強国建設に関する理論」とくくられている。

 第二は、「首領、党、大衆の一心団結」を準備したことで、それは、「我が国家の存立と発展の根本礎石である」と説明している。

 第三は、「自衛的国防力」を固めたことで、それは、「我が国家の尊厳と権益守護の頼もしい担保」であるという。

 第四は、「自立経済の強力な土台を固めた」ことで、それは、「我々式社会主義の明るい未来を引き寄せるこれ以上ない貴重な財富であり、無限大の底力である」という。

 その上で、後段では、「(そうした)金正日同志が一生を捧げてこられた社会主義強国建設偉業は、今日、敬愛する金正恩同志によって輝かしく継承発展されている」とし、「敬愛する金正恩同志の思想と領導は主体朝鮮の百勝の旗幟であり躍動する力である」と主張している。

 以上の論調は、やや意地悪く言うと、金正日の業績は、強盛国家建設の基礎でしかなく、それを実際に実現するのは金正恩という趣旨にもとれる。いずれにせよ、これからは、金正恩の構想・指導に従うべしというのが何よりも言いたいことであろう。

 ちなみに、本日の「労働新聞」は、紙面冒頭に、その金正恩平壌市内の「江東温室農場」及び「華城地区第2段階1万世帯住宅」の建設着工式に出席したことをそれぞれ報じる記事を掲載している。

 なお、前者では、趙勇元秘書が演説し、「(昨年の蓮浦温室農場建設に続き)再度大規模温室農場建設場に勇躍駆けつけた英勇な人民軍将兵に党中央委員会の委任により熱い戦闘的挨拶を送った」とのことなので、軍が建設を全面的に担当することになるのであろう。ただ、着工式に金光赫(空軍司令官)が参加しているので、蓮浦農場の建設が海軍主体であったとみられたのに対し、ここでは、空軍が重要な役割を担うことになると考えられる。

 一方、後者は、金徳訓総理が演説しており、軍と内閣など非軍事部門が協力して建設にあたるのであろう。金総理は、「立ちはだかる困難がいかに厳しくても人民が第一に待ち望む住宅建設だけは必ず実行しなければならないというのが我が党の崇高な志であり、確固不動の意志であると述べた」とされる。

 余談だが、農業問題に絞った次回中央委員会全員会議開催に関連して、「食糧危機」説が出ていた件だが、こうした野菜用の温室農場建設が重点になっていること、更には、住宅建設が最重点課題とされていること、などを勘案すると、やはり、「飢餓」状況などを想定するのは無理と思われる。仮にそういう状況が存在するのであれば、食糧増産の直結する作業を最優先にするのではないだろうか。