rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年10月8日 社説「偉大な領導者金正日同志の不滅の党建設思想と業績を限りなく継承発展させていこう」

 

 標記社説は、1997年10月8日、金正日が党総秘書に「推戴」されたことを記念して、同人の「党建設」に関する業績を称えるとともに、その継承発展を訴えたものである。

 社説が掲げる業績は、第一に「我が党を思想と領導の唯一性が確固として実現された首領の党として建設された」こと、第二に「朝鮮労働党を我が革命の強力な嚮導的力量として、強化発展させられた」こと、第三に「朝鮮労働党を人民の運命に責任を負い面倒見る真正な母なる党として強化発展させられた」ことである。

 そして、そうした思想・方針がいずれも今日、金正恩の指導の下で輝かしく実現されていることを強調した上で、それを「継承発展させていく」ための課題として、「敬愛する(金正恩総秘書同志の思想と領導を忠誠で奉じていく」こと、「党思想全般に人民大衆第一主義を徹底して具現」していくこと、「党組織の機能と役割をくまなく高める」ことなどを訴えている。

 実は、同社説については、本日の聯合通信が前掲2番目の業績の説明部分に含まれている「国と民俗の運命が生死の岐路に置かれていた厳酷な試練の時期に我が党を先軍革命の参謀部として強化発展させられた」との部分を抜粋して、金正日総秘書推戴記念日に際して「先軍」概念を強調したとする解説記事を掲載していた。

 しかし、社説全体の論旨は、前述のとおりであり、「先軍」に関数言及は、そのごく一部でしかない。しかも、それは、「試練の時期」において、党を強化発展させた出来事として記述されているのである。本来、「先軍」が金正日時代の代表的概念であったことを踏まえるなら、こうした扱いは、むしろ、「先軍」概念を矮小化したものと言っても過言ではないであろう。そうした点からすると、聯合通信の記事は、解釈を大きく誤ったものとの批判を免れないのではないだろうか。

 いずれにせよ、毎度のことであるが、過去の出来事は、現在の路線・政策を補強する形に再構成(換骨奪胎)され、提示されるのである。そうした傾向は、古今東西万国(あるいは万人)共通ともいえるが、北朝鮮にとりわけ顕著であることも否定できないであろう。