rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年11月1日 米韓合同軍事訓練の中止を要求する外務省代弁人談話を発表(加筆版)

 

 朝鮮中央通信は、10月31日、同日付けの外務省代弁人談話を報道した。同談話は、本年4月以来の米韓の合同軍事訓練の実施状況に言及しつつ、今般、「歴代最大規模の米国南朝鮮連合空中訓練である『ビジレントストーム』が始まった」ことを「共和国に反対する米国の核戦争脚本が最終段階に入ったことを如実に示している」と主張するとともに、そうした動きに対する北朝鮮の「自衛的な軍事的対応」を批判していることを「言語道断」などと非難している。

 その上で、北朝鮮の今後の対応として、「外部の軍事的脅威から国家の自主権と人民の安全、領土完整を守護するため必要なすべての措置を履行する準備ができている」としつつ、「米国が引き続き厳重な軍事的挑発を加えてくる場合、より強化された次の段階の措置を考慮することになる」とし、米国に軍事演習の即時中止を求めるとともに、「そうしない場合、今後もたらされるすべての後渦の責任を全面的に負わなければならない」と警告している。

 こうした北朝鮮の「警告」に対して、米韓側が演習を中止するとも思えず、北朝鮮もそれは分かっているであろう。その場合、北朝鮮として、何もせずに拱手傍観では、この談話が「口先だけであった」ということになってしまうので、「次の一手」も、当然検討済みと考えられる。

 それが「核実験」なのか否か、断言はできないが、一挙にそこまで進まず、米国向け大陸間弾道弾(ICBM)の発射などの可能性もあるのではないだろうか。今次「談話」が韓国よりも米国に的を絞って非難していること及びそれが「労働新聞」に掲載されていないことなどがそうした推測の根拠となりえよう。

 余談だが、核実験の時期について、韓国国情院の分析などをもとに、「米国中間選挙」以前の可能性が高いとの見方が一般的なようだが、私個人は、北朝鮮が核実験実施によって、中間選挙にどのような影響を与え、どのような利益につながると考えているとみられるのか、さっぱり理解できない。想像力の貧困をさらけ出すようだが、仮に共和党議席が増えたからと言って、北朝鮮に良いことがあるのだろうか。

 そんなことよりも、内外に対して、核実験実施の正当性、必要性を堂々と主張できる環境を作り出すことのほうが重要なのではないだろうか。そのためには、「歴代最大規模の空中軍事訓練」は、十分とはいえまい。北朝鮮の「次の一手」に対する米韓の対応がそうした水準に至るものとなるのかが、核実験実施を左右する鍵となるのではないかと考える。

以下加筆部分

 「談話」に戻るが、その中の「完整」という表現が気になる。「わが民族同士」ホームページにある「朝鮮語大辞典」によると、その意味は、「領土を完全に整理し治めること、又は、外来帝国主義侵略者どもに強占されたり分離されたりした領土を再度回復し国を完全に統一すること」である。

 この言葉、かつては、「国土完整」として、しばしば使われていたが、近年は余りみかけなかったところ、先日、何かで見かけた記憶がある。どこで見たか思いだせないのだが、いずれにせよ、「復活」の兆しがうかがえる。それが何を意味するのか、軽々に「赤化統一」論の復活と結び付けるべきではないと思うが、慎重に検討すべき課題である。