rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年3月5日 国防相代弁人が米韓合同軍事演習を非難の談話を発表

 

 本日の「労働新聞」は、国防相代弁人が3月4日発表した談話を掲載した。同談話の骨子は、次のとおりである。

  • 「米国と大韓民国が・・挑発的な大規模合同軍事演習をまたもや開始した」
  • 「(こうした演習は)人民の福祉増進のための経済建設に大規模の軍兵力が投入された朝鮮民主主義人民共和国の現実と明確な対照を成している」
  • 国防省は、・・軍事演習騒動を強く糾弾するとともに、これ以上の挑発的で、不安定を招く行動を中止することを厳重に警告する」
  • 「共和国武力は、・・朝鮮半島地域の不安定な安保環境を強く統制するための責任ある軍事活動を続けていくであろう」
  • 「米国と大韓民国は、自分らの誤った選択が招く安保不安を刻一刻、深刻な水準で体感することで、応分の代償を払うことになるであろう」

 韓国聯合通信の報道によると、米韓両軍は、3月4日から14日までの間、「定例連合演習」である「自由の防盾(FS:Freedom Shield)」演習を実施するとのことであり、同演習期間には、指揮所訓練と共に地上・海上・空中において多様な野外機動訓練を述べ48回(昨年同訓練では23回)実施する由である。その具体的内容としては、北朝鮮巡航ミサイルの探知・打撃訓練、連合空中強襲訓練、連合戦術実射撃訓練、連合空対空射撃・空対地爆撃訓練などが含まれるという。同演習には、また、12の国連軍司令部構成国も参観するという(規模は象徴的なものであろうが)。

 要するに、昨年に比し倍以上の内容の演習を開始したことになり、今次「談話」は、それに対する当然の反発といえよう。

 ただし、その表現を見ると、北朝鮮における最近の「地方発展20×10政策」への軍部隊動員などを想起させつつ、「安保環境の統制」を主張するものであり、抑制的な印象を受ける。もちろん、米韓に「安保不安を刻一刻、深刻な水準で体感」させるとしている以上、拱手傍観はしないであろうが、直接的な軍事攻撃などの行動に出る可能性は低いのではないだろうか。

 韓国で4月に予定されている総選挙への影響を考えると、北朝鮮の立場からは、この時期に直接的な武力衝突などを起こせば、総選挙に資するための「北風」を期待する尹政権の「挑発」に乗ることになるとの判断が働くと思われる。