rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年7月21日 強純男国防相が談話を発表、米韓核協議グループ発足、米原潜釜山入港を非難

 

 朝鮮中央通信は、7月20日、強純男国防省の同日付け談話を報じた。その骨子は、次のとおりである。

  • 「(7月18日の米韓『核協議グループ』会議開催及び米戦略原子力潜水艦の釜山寄港は)米国の対朝鮮核攻撃企図と実行が可視化、体系化される最も重大な段階に入り、朝鮮半島における軍事的激突の局面はあらゆる仮想と推測の限界線を越えて危険な現実に台頭したことを示している」
  • 「戦略原子力潜水艦を含む戦略資産展開の可視性増大がわが国家核戦力政策法令に明らかにされている核兵器の使用条件に該当しうる」、「共和国の核使用教理は、国家に対する核兵器攻撃が強行されたり、使用が差し迫ったと判断される場合、必要な行動手順の進行を許している」
  • 「共和国武力は、朝鮮半島で核を使用しようとする米国とその手先らの狂った行為を徹底的に抑止、撃退することで、国家の主権と領土保全、根本利益を守り、朝鮮半島と北東アジア地域での核戦争を防止するための自分の重大な使命を責任を持って果たす」

 北朝鮮は、米韓核協議グループの発足及び米戦略原潜の釜山入港に対し、既述のとおり19日の短距離弾道ミサイルの発射という形で対応していたが(20日付け本ブログ参照)、同談話は、米韓のそうした行動により、北朝鮮による核兵器使用が可能な状況が醸成されたと主張することで、それを補完したものといよう。

 すなわち、同談話は、北朝鮮が実際の核攻撃がなくても、核攻撃が「差し迫ったと判断」した場合には核兵器を先制使用しうるということを前提としつつ、まさに米韓核協議グループの発足や米戦略原潜の釜山入港がそうした状況を招いている(と判断している)と主張しているところが最大のポイントであろう。

 しかし、いかに厳しいレトリックを用いたところで、現状において直ちに北朝鮮核兵器を先制使用するとは想定しがたく、そうした主張は、結局のところ、現実性を欠くものといわざるをえない。そういう意味で、逆説的ではあるが、こうした空言を費やしているだけであれば、北朝鮮の対応は、なお抑制的と言えるであろう。注視すべきは、実際の行動である。

 ところで、今般、中ロが日本海で合同訓練を実施する由であるが、仮に、北朝鮮がこれに参加するとなれば大変なことになろう。換言すると、北朝鮮が「新冷戦構造」を強調し、外交面では中ロとの連携を強化しつつある中でも、両国との軍事的な連携には極めて慎重であることの意味をしっかり検討(評価)すべきということである。

 なお、国防相の姓については、以前、本ブログでは、「姜」と表記していたが、朝鮮中央通信の日本語版で「強」の文字が使われているので、それにならうことにした。しかし、本当に「強」という姓があるのかは疑問である。