rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年7月20日 短距離ミサイル発射を報じず

 

 韓国軍によると、北朝鮮は、19日午前3時半ごろから同3時46分ごろにかけて平壌順安付近から朝鮮半島東の東(日本)海上に向け、短距離弾道ミサイル2発を発射した。ミサイルはそれぞれ約550キロを飛行し、東海上に落下したという。なお、日本の防衛省によると、これらミサイルは変則軌道を飛行した可能性があるとのことである。

 しかし、本日の「労働新聞」はじめ北朝鮮公式メディアは、これまでのところ、同ミサイル発射について、何らの報道も行っていない。

 北朝鮮からの報道がないということは、同発射が、ミサイル開発における格別の技術的進展を意味するものではない、既存のミサイルの発射であったということであろう。

 もちろん、その狙いは、18日に開催された米韓核協議グループ(NGC)の初会合及びそれに合わせる形での米国の戦略核兵器搭載原子力潜水艦(SSBN)の釜山寄港に対する反発を示すものであろう。そうした狙いは、同ミサイルの飛行距離(550㎞)が発射地点(順安)から釜山までの距離にほぼ相当する(韓国軍高官発言)とされることからもうかがうことができる。

 ただし、「敵対勢力の軍事的脅威と挑戦が加重されるほど・・より強力な軍事的攻勢を連続的に取っていく」との金正恩の発言(12日の「火星砲18」発射時)からすると、前述のような画期的ともいえる米韓の拡大核抑止態勢強化のデモンストレーション(しかも、19日には、尹大統領が同潜水艦に乗艦との更なる演出)に対して、無言での短距離ミサイル2発の発射だけですますことができるのか、疑問なしとしない。仮に、それで済ませてしまうとすれば、むしろ抑制的な対応と言っても過言でないであろう。北朝鮮の今後の動向には一層の注視が必要といえる。