rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年12月21日 金正恩のミサイル総局第2赤旗中隊との記念写真撮影を報道、金予正は談話を発表

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩が20日、「(18日の)大陸間弾道ミサイルの発射訓練に参加したミサイル総局第2赤旗中隊の軍人に党中央委員会の本部庁舎で会って、祝賀激励」し、記念写真を撮影したことを報じる記事を掲載した。

 これには、党中央委金正植(軍需工業部)副部長と張昌河ミサイル総局長が参加したとしている。一方、掲載された記念写真には、金正植副部長と共に金正恩の「娘」の姿がある。その他の軍人は、約80人余りである。

 同記事が伝えるこの際の金正恩の発言は、概ね、18日の発射に際しての発言の繰り返しであり、その主な部分は、次のとおりである。

  • 「(18日の)発射訓練を世界がこれ見よがしに果敢に断行することによって、我が党と政府、軍隊と人民の不屈の反米対応立場を実践的行動で見せ、共和国核戦略武力の信頼性と戦闘的威力を誇示」した
  • 「発射訓練で高い機動性と迅速な攻撃能力を見せた中隊の戦闘力に深く感服する」
  • 「(今次発射訓練は)敵が核を持って我々に挑発する時には、躊躇することなく核攻撃も辞さない我が国家の攻撃的な対応方式と我々の核戦略と核教理の進化に対する明白な説明であった」
  • 「いかなる敵も恐れざるを得ず、どこにいる敵でも先制的に攻撃できる実際の能力と臨戦態勢を整えるのが他ならぬ真の防衛力であり、強固な平和守護である」
  • 「第2赤旗中隊がいつでも核戦争抑止の使命を遂行できるように徹底的に準備することで、戦争の防止と平和守護の聖なる特命を頼もしく貫徹していくとの期待を表明」

 今次報道のハイライトは、下線部分であろうが、所詮レトリックである。こうした記念写真撮影も、ICBM発射の宣伝効果を増幅すること、つまり「1粒で2度美味しい」効果をねらってのことといえよう(それをこうしてブログで紹介している行為も、そうした狙いに乗せられていることにほかならないのだが)。

 本来注目すべきは、最後の2項目、すなわち、こうした戦力構築ないし運用態勢維持こそが戦争を抑止する力そのものであり、それを実際に担当しているのがこの第2赤旗中隊(つまりは「火星砲18」)であるとの認識と考える。昔、現役の幹部自衛官であった友人から、「自分たちが日々の訓練を通じて実戦力を維持していることがまさに侵略抑止につながると思って、日々頑張っている」といった趣旨の話を聞いたことがある。そういう意味で、こうした考え方自体は、万国共通と言えるものであり、過剰に恐れる必要はないのではないだろうか。

 

 一方、朝鮮中央通信は、本日、金予正党副部長が同日、談話を発表したことを報じた。その骨子は、次のとおりである。

  • 「国連安保理はまたもや、朝鮮民主主義人民共和国の反応を触発させた直接的動機である米国と大韓民国の修辞的・行動的挑発は排除、黙認したまま、我々の自衛権行使(18日のICBM発射)だけを問題視する会議を行って(現地時間19日開催)、国際平和と安全の保障に無用で無力な自分の真面目を赤裸々にさらけ出した」
  • 「国連安保理は・・米国と大韓民国の無責任な態度と行動に重い責任を負わせるべきであり、国際社会は地域情勢激化の張本人らに一致した批判の声を高めるべきであろう」
  • 「米国と大韓民国が予告した今後の対朝鮮軍事的対決脚本を、朝鮮民主主義人民共和国がその性格をいかに規定して見なし、どのような方式で対応してやるか、敵対勢力は今から悩む方がよかろう」

 こちらの主張も相変わらずの「二重基準批判」論理に基づくものであり、何らの新味もないが、鍵カッコを付けずに大韓民国と表現していることは、同人の談話の中では初めてのことであり(7月17日付け談話では、鍵カッコ付きで使用、11月29日付けでは言及なし)、注目に値する。

 ただ、鍵カッコ付きにせよなしにせよ、最近、大韓民国との表現を多用していることの狙い、意味については、今のところ分からないというのが正直なところである。