rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年7月13日 金正恩指導下での「火星砲18」試験発射実施を報道

 

 本日の「労働新聞」は、12日に実施された標記試射に関し、「朝鮮民主主義人民共和国戦略武力の強化発展行路に刻まれたもう一つの意義深い大事変 新型大陸間弾道ミサイル試験発射断行 敬愛する金正恩同志が大陸間弾道ミサイル『火星砲18』型試験発射を指導された」と題する記事及び発射関連写真を第1面から2面を費やして大々的に掲載した。同記事の骨子は、次のとおりである。

  • 試射実施の背景事情:「米国とその追随勢力の軍事的挑発行為が前例なく加重され朝鮮半島と地域の軍事安保形勢が冷戦時代を超える核危機局面に近づいた厳重な時期」、「極めて挑発的な空中偵察行為」や「米核潜水艦の南朝鮮投入」など「常時的な軍事準備態勢をはるかに超え朝鮮半島情勢を実際的な武力衝突状況に追いやる徹頭徹尾戦略性挑発行為」は、「(北朝鮮をして)自衛力強化、自衛的核戦争抑制力向上により拍車を掛けることを要求」
  • 試射の意義:「共和国戦略核武力の一層の高度化」と同時に、「(北朝鮮の)揺らぐことのない圧倒的対応意志と物理的力の実体をはっきりと示し、敵に反共和国軍事的選択の危険性と無効性を再度はっきりと刻印させるため強力な行動的警告」
  • 発射手順:金正恩が中央指揮監視所において発射を「承認」→金正植大将(党軍需工業部副部長)が「発射命令下達」→ミサイル総局第2赤旗中隊が「発射任務を担当」
  • ミサイル飛翔状況:「1段階は標準弾道飛行方式で、2,3段階は高角飛行方式で設定」「最大頂点高度6,648.4㎞、距離1,001.2㎞を4,491秒で飛行、朝鮮東海(日本海)公海上の目標水域に正確に弾着」
  • 試射結果:「新型戦略武器体系の能力と信頼性、軍事的効用性」を検証
  • 金正恩発言等:「試験発射結果に大満足を表示」、「より発展的で効用的で信頼できる武器体系開発を持続的に推進」、「敵対勢力の軍事的脅威と挑戦が加重されるほど・・より強力な軍事的攻勢を連続的に取っていく」、「国防科学研究部門のすべての科学者、技術者に熱烈な祝賀と感謝の挨拶を送られた」
  • 同行者:記事中には記載ないが、添付写真では、金正恩の傍らに、金正植に加え趙勇元組織秘書及び李雪柱夫人の姿。娘の姿はなし

 「火星砲18」の発射は、去る4月13日以来のことである。その時、北朝鮮報道は最大高度について明らかにしていなかったが、韓国軍発表では約3,000㎞とされており、今次発射はその2倍以上の高度に達したことになる。同ミサイルの開発が技術的に相当進展したと見て間違いないであろう。韓国報道では、今次高角度での飛行は、通常角度にすれば1万5千㎞に相当とのことであり、米国本土に十分到達しうる固体燃料型大陸間弾道ミサイルの完成ということで、国内外に対し、偵察衛星打ち上げ失敗の汚名挽回を果たしたともいえる。

 なお、4月の発射に際しては、発射を担当したのは今回と同じくミサイル総局第2赤旗中隊であったが、命令を伝達したのは、張昌河大将であった。同人は、今回は姿が見えず、あるいは、先の偵察衛星打ち上げ失敗の責任を問われた可能性も考えられる。また、前回の発射では「娘」の姿が大きく露出されたが、今回は認められない。何か意味があるのだろうか。

 いずれにせよ、この試射を契機に金正恩の動静・言動が久々に報じられたわけだが(そもそも、そのための試射であったのかもしれない)、今後の同人に関する「報道正常化」につながるのか慎重に検討する必要があろう。当面、「娘」の動向ともあわせて、27日の戦勝節に予見されている軍事パレードでの状況が注目される。