rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年12月20日 黄海南道農村経理委員会農業経営幹部学校の竣工を報道

 

 本日の「労働新聞」は、「新時代農村革命綱領実行を主導していく人材育成の拠点」との見出しを付して、標記学校の竣工式が19日に行われたことを報じる記事を掲載した。

 同記事は、同学校の設立意義について、「農業経営幹部学校が農業科学技術人材育成の拠点として新たに設立されることによって、農村初級幹部を党の農業政策を先頭に立って奉じていく真の農村革命家、先進農業科学技術を所有した実力家として準備させることができるようになった」と主張している。

 竣工式には、同道党委員会責任秘書・朴泰徳以下の幹部や学校教職員、学生が参加し、同道農村経理委員会委員長・源敬模(音訳)が竣工辞を述べたとされる。同党責任秘書が出席したことからは、同学校の設立をそれなりに重視していることがうかがえる。

 管見の限りでは(これが実にあてにならないのだが)、こうした農村初級幹部を対象とした「農業経営幹部学校」の存在ないし設立が報じられるのは初めてのことではないだろうか。

 最近力を注いでいる農村振興政策の一環として、とりわけかねて進めてきた農場の改編を実効あらしめるため、その基盤となる営農現場での経営・科学技術力量を強化しようとの狙いに基づくものであろう。また、従来、存在感の薄かった(私個人の印象かもしれないが)農村経理委員会の指導的機能を強化する意味もあるのではないだろうか。

 今回、まず、穀倉地帯である黄海南道に設置し、以後、それをモデルとして、各道にも順次普及させていくのではないかと思われる。添付の写真を見るに、比較的簡素・小ぶりな校舎であるが、その教育内容などは、今後の北朝鮮の農業の方向性を示すものとして注目される。

 なお、同日の「労働新聞」には、別途、同道の「山林科学研究所」の竣工式が同じく19日に実施されたとの記事も掲載されている。こちらは、党委員会からの出席者は秘書レベルにとどまっているが、道人民委員会委員長が「竣工辞」を述べ、「道内のすべての山々を有用な黄金山、宝物山へと転変させる上で実質的に貢献」することを訴えている。

 北朝鮮において、ミサイル、衛星などのように国外から注目はされないが、農業、林業などの科学化、効率化に向けた努力が着実に進められていることも無視できない現実である。