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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年3月2日 党中央委第8期第7回全員会議拡大会議が閉幕

 

 本日の「労働新聞」は、標記会議に関し、2月26日の開幕から3月1日の閉幕まで4日間の全般状況をまとめて報じる記事を掲載した。昨日までの報道分も含め、会議概況を改めて整理すると次のとおりとなる。

  初日(26日)

  • 冒頭手続き:党政治局該当メンバーにより執行部を構成、金正恩に司会を委任
  • 金正恩「開会辞」:今次会議の目的について明示。「新たな農村革命綱領実行の初年度事業状況に対する党中央委員会の分析と評価を下された。・・農業発展に否定的作用をする内的要因をその都度探し出し解消することが切実な要求」であるので、「昨年の農業の全過程を科学的に解剖学的に主客観的に正確に評価して該当の方策を導出し、農事と展望的な農業発展土台を築くための切実で必須的な課題と方途的問題を再度明白に確定」
  • 議題上程①新時代農村革命綱領実現のための初年度闘争状況と一連の重要課題について、②人民経済計画遂行規律を徹底して確立することについて、③国家財政金融事業を改善する上で提起される当面の問題(複数)について、④組織問題
  • 第1議題討議 (1)新時代農村革命綱領実現のための2022年度事業状況に関する報告を聴取(報告者不詳):「初年度事業において成し遂げた成果と是正、克服すべき偏向及び教訓が多面的に解剖学的に詳細に指摘」

以下、2日目(27日)

(2)党中央委秘書(複数)が討論(党の新たな農村発展戦略実行過程において該当部門と単位で現れた偏向と原因、教訓を分析し、対策的問題を提起)。諸部門指導幹部が書面討論を提出

(3)金正恩「結論」(「今年の農事において提起される当面課題と農業発展の展望目標について」):「農村革命綱領の歴史的意義と重要性について再度強調」の上、「(同)綱領を完璧に実行する上で堅持すべき原則的問題(複数)を提示」するとともに、「主な農業発展目標と課題」を提起」(異常気候現象に備えた全般的灌漑体系の完備促進、能率の高い新型農業機械の増産・供給、干拓地開墾と耕地面積拡大、農業科学技術発展の土台向上など)。「農業生産指導において堅持すべき原則的問題と試行方途」を明示(町歩当たり収穫高増大を中心を指導原則、道・市・郡の指導機関とすべての農場の役割を高めることについて特別に強調)。その他、「農村住宅建設」「農業部門に対する党的指導を強化」などに言及

  • 第2議題討議
    • 金正恩、趣旨説明:「経済部門と単位の計画遂行過程で成し遂げている肯定的な変化と偏向的な問題について指摘」した上で、「いったん立てられた人民経済計画については誰も取引する権利がないとされ、経済部門幹部が計画遂行に対する観点を正しく持ち、現れ得る難点を予見し克服方途を模索しつつ頑強に努力」「すべての党組織が国の経済司令部である内閣の組織力と執行力を弱化させる行為との闘争を強く展開」などを強調
    • 「報告」(報告者不詳):「人民経済計画遂行規律を徹底して確立する上で提起される対策的問題が反映」
  • 第3議題討議
    • 「報告」(金徳訓総理):国の財政土台と財政規律を強化し、銀行事業を改善し、科学的な国家金融体系を確立」

以下、3日目(28日)

  • 分科別研究・協議会:8個分科を組織、党と政府の幹部が指導。「(金正恩の)結論の基本思想にしたがって関連問題を深く研究したところに基づく革新的で進取的な意見が忌憚なく提起され・・科学的な対策案、実行可能性が徹底して検討された実質のある作戦案が樹立された」

以下、4日目(3月1日)

  • 第8期第14回政治局会議を開催:趙勇元が司会、「分科別研究・協議会で提起された意見に基づき、農業発展計画と重要経済問題を反映した決定書草案を審議し、実現可能性を検討し、最終完成」、「第8期第6回全員会議決定書の一部条項を修正補充する問題を討議決定」
  • 決定書採択
    • 社会主義農村革命綱領の輝かしい実行のための発展展望的な決定書を満場一致で採択
    • 経済発展のための重要問題も決定書として採択
    • 第8期第6回全員会議決定書の一部条項を修正補充する問題が決定
  • 第4議題討議
    • 中央委員(5人)、同候補委員(3人)を補選
    • 党中央委部長の任免:崔東明・科学教育部長
    • 政府機関幹部の任免:安金哲・金属工業相、崔根栄・中央裁判所所長
  • 金正恩「閉会辞」:今次会議で、「農業を近い数年内に安定的で持続的な発展軌道に確固として乗せるためのより確実な方案を策定」したと評価
  • 会議の意義:「社会主義農村が飛躍的に発展する偉大な新時代、自立経済発展の全盛期を開いていく上で転換的意義を持つ新たな跳躍の里程標」

 

 報道の骨子は、以上のとおりである。分科会を3個としたのは誤りで実際は8個であったことを除いては、概ね、昨日の本ブログで指摘したことが確認されたと考える。結局、金正恩が、自分が2021年末に提起した「新農村革命綱領」について、もっと緊張感を持って真剣に取り組めと発破をかけるための会議であったと総括できるのではないだろうか。 

 そして、そのための具体的な課題として強調されたのは、自然災害に備えた灌漑体系整備や農業機械の増産、科学化促進、耕地面積拡大など従来同様のものであった。

 一方、注目の協同組合の改編については、直接的な言及はなかった。「農業生産指導」に関し、「試行方途」が示され、「道・市・郡の指導機関とすべての農場の役割を高める」とされたことなどが、あるいは、それに関連するのかもしれないが、いずれにせよ、「試行」段階であって、確たる方針を明示するには至っていないと考えられる。

 また、会議進行に関しては、中央委全員会議期間中に政治局会議を開催し、分科会での意見等を集約・審議するという方式が、昨年末の前回会議に継いで踏襲された。ただし、前回は金正恩が司会したが、今回の政治局会議は、金正恩は欠席で趙勇元が司会した点が異なる。

 このほか、今次全員会議(政治局会議もそうだが)では、崔竜海が出席しなかったことが気になる(同人は、先の閲兵式も欠席。ただし、2月2日、最高人民会議常任委員会第14期第24回全員会議を「司会」しており、健康問題・失脚ではなさそう)。