rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年9月29日 社説「農村振興の変革的実体を相次いでもたらしている偉大な党の領導を忠誠を尽くして奉じよう」

 

 標記社説は、去る9月25日、 金正恩の指示に基づき、軍需工業部門で製造した5,500台の農業機械(稲刈り機など)を黄海南道の農場に伝達する集会が開催されたこと(海州市広場。27日付け「労働新聞」報道)を受けて、農業部門の振興を訴えたものである。同集会で「伝達辞」を述べた李炳哲党秘書(軍需部門担当)は、こうした措置の背景に金正恩の「人民の食べる問題、人民生活問題を解決することが国を守ることである」との考えがあることを紹介していた。

 社説は、それを更に敷衍して、「党の構想と領導により、社会主義農村の新たな発展を始める偉大な歴史的転換点において最も重要かつ切迫した課題の一つとして提起されることが、まさに農産作業の機械化比重を決定的に高めることである」とした上で、「国の経済状況が極めて厳しいときに農業機械生産に惜しみなく力を注ぐことは、ただ朝鮮労働党だけが下すことのできる勇断であり、偉大な我が党だけが成し遂げ得る革命的実践である」と、そうした措置の独特性、偉大性を強調している。

 そして、「農業部門のすべての幹部と勤労者は、党の信頼と愛を心臓に刻んで、社会主義農村建設綱領実現のための闘争において農業戦線の主人としての本分をまっとうするため総決起、総邁進しなければならない」と訴えると同時に、「すべての部門と単位においては、党の社会主義農村建設綱領実現における農業生産の機械化が占める重要性を肝に銘じ、軍需工業部門労働階級が発揮した忠実性と責任制、献身性を模範として、農村に能率の高い農業機械を多く生産し送り、農業生産環境を先進的で現代的に変化させるための事業に一体となって奮い立たなければならない」と農業の機械化促進を訴えている。

 こうした一連の動きは、党中央委第8期第10回政治局会議(9月25日開催)において、当面する秋収作業への総力集中策などが討議・決定されたこととも関連するものと言える。ただ、子細に見ると、政治局会議の決定がどちらかというと当面課題への集中的取り組みに力点を置いたものであるのに比して、社説の主張は、「農業の機械化」(あるいは「農村建設綱領実現」)という中・長期的な課題を正面に掲げるものといえる。

 こうした切迫する当面課題への取り組み強化を訴えつつも、その先の展望的目標をも強く意識させるという論法は、先の最高人民会議における金正恩の「施政演説」でも特徴的に示されたところであり、偶然のものではないであろう。ただ、そうした論法を展開する狙いは、私にとっては、依然として「謎」である。