rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月11日 社説「新たな5か年計画の初年度穀物高地を無条件で占領しよう」

 

 標記社説は、表題の通り穀物増産を督励するものであるが、そこで注目されるのは、「社会主義信念は、決しておのずと生じ、強化されるものではない。それは、粘り強い思想教養と同時に社会主義施策、人民的施策が実生活を通じて皮膚に感じられるとき、よりしっかりと固められる」などとして、食糧の確保を体制に対する人民の信任確保のための前提という面から強調していることである。

 その上で、2019年には「不利な気象気候が継続した条件でも(穀物の)最高収穫年度水準を突破」できたことなどをあげて、「5か年計画」初年度にあたる今年の穀物生産目標が無理なものではないことを主張しつつ、その実現のための課題として、「災害性気候に対処した科学的で現実的な方策を立てる」こと、「農業勤労者の意思と利益に即して分組管理制内の甫田担当責任制を正確に実施し彼らが高い生産意欲を持つ」ようにすることなどを求めている。なお、後者に関しては、「営農の担当者はどこまでも農業勤労者である。主人の観点と働きぶりによって穀物生産成果と彼ら自身の生活も左右される」とも述べている。

 また、「農業発展の5大要素」として、①種子革命、②科学営農、③低収穫地における増産、④新しい土地探し、⑤干拓地開墾、を挙げ、それぞれに粘り強く取り組むことを訴えている。

 更には、他の部門に対しても、「全党的,全国家的に農業を積極支援」し、「農村に化学肥料、燃油、電力、農機械部品などを適時に責任を持って保障」するよう求めている。

 そして、最後に改めて、食糧増産を実現することによって、「人民の食卓から労働党万歳の声、社会主義万歳の声が高く上がるようにしよう」と結んでいる。

 以上のような社説の内容からは、北朝鮮穀物生産が2019年にはいったん過去最高水準を実現できたものの、昨年は台風被害などで減収となり、体制への信認確保が懸念される事態に至っていること、それを受けて「5か年計画」においては、品種、灌漑など各方面の施策を総合し、気象条件に強く影響されることなく安定的な穀物生産を確保できる営農体制の構築を目指していること、などをうかがうことができる。食糧の安定的確保が北朝鮮の目指す「自力更生」体制実現の大前提であり、また最大の課題となっているのであろう。