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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月12日 論説「人民経済計画遂行に対する方向舵役割をしっかり行うことは党組織の重要な役割」

 

 標記論説は、金正恩が先の党大会(の「結論」)において、各種経済単位などに設置された党組織が当該単位の運営における「方向舵」の役割を果たすべきと訴えたことを受け、その趣旨を敷衍したものである。

 論説は、まず、言葉の意味について、「行政経済事業に対する党的指導の基本方法は、党委員会の方向舵役割、すなわち、方向的指導と方法的指導である。換言すると、党政策的要求に即して経済事業が円満に運営されるよう最も正確な道を明らかにし、その線上から脱線しないよう正しく指導することである」と説明する。その上で、「方向舵役割をしっかり行う上で重要に提起される問題」として、次の3点を掲げている。

 第1は、「党委員会の集団的指導を強化すること」である。これが意味するのは、党責任秘書個人の独断的指導を防止することのようである。そのような現象に対して、「特に、党責任幹部(高位幹部の意)が主観と独断を振り回さず・・」「徹底して警戒すべきは、党責任幹部の主観と独断である。党幹部が行政経済幹部の後ろを追随していてはだめだが、そうだからとして主観と独断を振り回しては一層だめである」など繰り返し戒めている。

 そして、更に具体的には、「工場、企業所において3位1体の主人である党責任幹部が・・支配人、技師長と互いに心を合わせ同志的に緊密に協助しつつ呼吸を合わせて」いくことを求めている。結局、工場・企業所の党委員会というのも、この3人が中心になって運営されているのではないだろうか。

 第2にあげられているのは、「党の経済政策が正確に執行されるよう定期的に掌握指導し、統制すること」である。これを換言すると、「助け、総括し、再布置する方法」ということになる。

 そのための具体的方法としては、とりわけ「月生産総括を実質的に行うこと」を強調している。ここで「実質的」というのは、単に実務的に生産状況を確認するにとどまらず、そこに党活動ならではの政治的色彩を発揮せよということであろう。すなわち、「(総括過程などを通じて発露された)敗北主義と保身主義にとらわれ条件多発だけして事業を大胆に展開できないのをはじめとした否定的現象を克服するための教養と思想闘争を強く展開」することを訴えている。

 論説は、最後に、「党幹部の政治実務水準」の重要性を強調している。党幹部は、金日成・正日・正恩の教えにとどまらず、「党事業理論と党事業方法を体質化し、該当部門の専門科学技術知識と経済管理知識も身につけるため血のにじむほど努力」すべきというのである。

 以上のような論説の主張は、従前から主張されてきた党組織の活動の在り方を繰り返したものであり、格別の新味があるわけではない。結局のところ、金正恩がこのたび「方向舵」という言葉を用いたのは、新たな概念とか活動内容を打ち出したのではなく、そのような象徴的表現を用いることによって、旧態依然たる主張に新味を加え、改めてのその確実な励行を促すことを目指したものであったと考えられる。