rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月23日 社説「来年の営農準備をくまなく整えよう」

 

 「80日戦闘」における重要目標の一つは、農業部門で穀物取入れと脱穀をすべて終え、来年の営農準備をしっかりと行うことである。そのうち前者は、前掲ブログで記載した通り、前半の40日間で「全部結束」されており、後半で取り組むべき課題は後者ということになる。標記社説は、それを督励するものといえよう。

 同社説は、その作業内容の概要を「種子の準備からはじまって、農機械と農機具の修理整備も行わなくてはならず、質の良い有機肥料も充分に生産し耕地に施さなければならない」と説明した上で、各作業について具体的に課題を列挙している。

 このほか灌漑関連施設についても、「揚水機修理整備と高圧電動機改造を質的に行い、水路と貯水池、貯流池建設・・・などを計画通り進めなければならない」とその整備充実を進めるよう訴えている。

 更に、「農産作業の機械化比率を高める事業」として「各地トラクター付属品工場と連結農機械工場、農機械作業所と農機具工場でも目標を高く立て、設備をフル稼働させて営農に必要な農機械と農機具、付属品を生産保障」するよう求めている。

 なお、同社説は、穀物生産の結果については、「例年には稀な自然災害によってどの部門よりも大きな難関を経たが、農業部門の多くの単位では、穀物増産のための価値ある経験を準備し、多収穫を収めた」と微妙な表現を用いている。これが何を意味するかは判然としないが、おそらくは、穀物生産全体としては、一時示唆された、過去最高の収穫を収めた前年に準じる程度と言うのはやや困難な水準にとどまることが予測されているのではないだろうか。しかし、社説は、その成果に「おごることなく」来年の営農準備をせよと訴えているので、少なくとも大幅減収で来年の円滑な食糧供給を心配しなければならないほどの不振は免れたのではないだろうか。

 仮に取り入れの結果、大幅減収の見込みということであれば、食糧の買いだめなどで市場価格が高騰することが想定されるが、「アジアプレス・ネットワーク」の市場価格推移を見ると、コメ、トウモロコシともに最近における顕著な変動は認められない(コメは直近に比すると1割程度値上がりしているようだが年初からの変動の幅に収まっている)。このことも、北朝鮮国内での穀物生産実績に対する率直な認識を反映しているといえよう。

 結果的に、今年の農業部門(穀物生産)の成果については、自然災害による減収を「80日戦闘」を通じた努力によって最大限挽回し、概ね例年並みの水準を維持できたという形で総括されることになるのではないだろうか。