rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月19日 社説「党の科学的農事方針を徹底して貫徹しよう」

 

 標記社説は、「農業生産を増やし人民達の食卓から社会主義万歳の声が高く立ち上るようにしようというのが我が党の確固たる決心である」として、食糧増産の意義を強調した上で、そのための必須の手段として「科学農事」の実践を呼びかけるものである。

 その呼びかけの最初の対象は「農業部門幹部」であり、「科学農事により穀物生産を飛躍的に増やしていく上で農業部門幹部の任務と役割が非常に重要である」と強調し、「古い経験主義に固執して科学技術を敵視する傾向をなくし、科学研究成果を農業生産に適時に積極的に導入」するよう求めている。

 次の呼びかけ対象は「農業勤労者」であり、「すべての営農作業を技術的要求、科学的理知に合わせて行うことを習性化」することなどを通じて、農業生産の直接の担当者としての「責任と役割をまっとう」することを求めている。

 また、「農業部門の科学者、技術者」に対しては、「農業生産の重要なカギである種子問題、営農技術問題、総合的機械化問題をはじめとした党の農業政策貫徹において切実に提起される科学技術的問題を解決することに総力を集中」するよう求めている。

 以上の社説の主張からは、現実の「食卓」の状況が決して人々を満足させるものとなっていないこと、農業部門幹部の中の守旧的な傾向が科学技術成果の導入を妨げていること、農民の作業姿勢に粗放的な傾向があること、などをうかがうことができる。

 また、ここでは論じられていないが、「科学農事」の導入・実践の障害として想定される別の要素として、先進的な農法を担保する各種肥料・資材などが農業部門に円滑に供給できていないことをあげることができよう。ここで批判されている農業部門幹部の消極的姿勢も、あるいは、そのような現実的懸念に基づくものとも考えられる。それが確実に担保されない限り、「科学農事」のスローガンも空回りするしかないであろう。

 次の「経済発展5か年計画」においても、食糧増産は、そういった背景部門の整備も含め、最重要課題の一つとして掲げられることになると考えられる。