rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年1月25日 評論「人民生活向上のための闘争において実際的な前進を成し遂げよう」

 

 標記評論は、「5か年計画の本年課題遂行に総邁進しよう」との共通題目の下、他の記事と共に掲載されたものである。

 まず、「人民生活向上」の効用について、「人民生活を安定させ絶え間なく向上させていくとき、偉大な首領様と偉大な将軍様の生涯の念願を実現することができ、我が人民の心の中に社会主義勝利に対する確信を植え付けることとなり、人民経済すべての部門、すべての単位において飛躍的な生産的昂揚が起きることとなる」として、その重要性を強調した上で、関連する部門ごとに奮起を促している。

 最初にあげられた部門は、農業部門であり、「コメによって党と革命を保衛するとの非常な覚悟」を訴えている。

 次に水産部門に対し、「水産は農産、畜産とともに人民の食べる問題を解決し食生活水準を高めるための3大軸の一つ」であるとして、その重要性を強調している。

 それに続いて軽工業部門があげられ、原材料の国産化、リサイクルなどを追及した結果、「製品の質を無視する偏向が現れないよう」にとの戒めがなされている。

 最後に建設部門に対し、ただ家を建てるだけを目指すのではなく、建築物に「我が党の高い理想が反映されるよう思想性と政治性を発揮していく」ことを訴えている。

 本評論で注目されるのは、まず、人民生活向上の効用として、人民に対し社会主義体制に対する信任、支持を植え付けることに加え「生産的昂揚」を挙げていることである。前者は、以前から繰り返されてきた主張であるが、後者が挙げられるのは管見の限り、稀有なことと思われる。これは、勤労者の生活が安定・向上すれば、その生産性も向上するということと理解できる。現状では、勤労者の生活が不安定なため欠勤とか勤労意欲低下を招いているということの反映であろうか。

 もう一つ注目されるのは、各部門に対する訴えに総じて余裕が感じられることである。農業部門に対する「コメで・・」を除くと、水産部門に対する「食生活水準の向上」とか軽工業部門に対する「質」重視の訴え、建設部門に対する「党の高い理想」反映の訴えなどは、いずれも、生存に必要な生活水準の確保というよりは、その豊富化を志向したもののように思われる。

 この二つの指摘は必ずしも整合的ではないかもしれないが、逆に、北朝鮮の人民生活において、そうした錯綜した状況が存在することの反映とも考えられる。