rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年11月30日 社説「5大教養を強化しよう」

 

 標記社説は、5大教養、すなわち、「革命伝統教養、忠実性教養、愛国主義教養、反帝階級教養、道徳教養」(ここで「教養」とは「教育」ないし「教化」の意味)の更なる徹底を呼び掛けるものであり、先般来の「3大革命」推進路線、とりわけ、その中心課題とされる「思想革命」推進策の一環として掲げられたものと思われる。

 まず、その意義について「5大教養は、人々を革命的首領観と百折不屈の革命精神、熱烈な祖国愛と透徹した階級意識、高尚な道徳観を帯びた真の革命家として育てる名薬である」と主張する。また、それを「より強化すること」の意義としては、「我々の政治思想陣地をくまなく固めていくための根本担保」であり、「立ちふさがる挑戦と試練を果敢に粉砕し我々式社会主義の新たな勝利を促進するための必須的要求」であることを挙げている。

 その上で、「すべての党組織と勤労団体組織においては、現時期5大教養が持つ重要性を深く自覚し教養事業を直線的に攻勢的に展開」すること、具体的には、①「すべての人民が敬愛する総秘書同志がいらっしゃれば我々は必ず勝利するとの鉄石の信念を堅持し、総秘書同志の思想と領導を忠実に奉じていくようにする」こと、②「偉大な国家復興の新時代を開くための今日の総突撃戦を力強く推動」するため「皆が歴史的使命感と本分を自覚しより大きな闘争力と奮発力を発揮していくように」することを訴えている。

 更に、そうした「思想事業」の推進に当たっては、「各種の形式と方法を実質的に進行し、その実効性を増幅させていく」ことを求め、その背景として「今日、我が革命の時代的環境と条件が大いに変化し、我が人民の意識水準も極めて高まった」ことをあげている。

 なお、5大教養のうちの「道徳教養」に関しては、本日掲載の別の評論「道徳が支配する国が真正な強国」において、「政治軍事強国の地位を強固にし、経済建設を促進することも重要であるが、それに先立って、すべての人々を道徳の強者として育てること」が「党の思想」であると主張して、その重要性を訴えてる。そして、そうした道徳教養を不断に継続すべき必要性の根拠として、「我々を内部から瓦解させるための敵対勢力の策動が人々、特に革命の主力として登場し峻厳な試練を経たことのない新世代、青年たちを腐敗堕落させることに集中されている現実」を指摘している。

 ここで注目されるのは、こうした思想教養の対象となる人々の意識状態である。社説においては、「人民の意識水準も極めて高まった」とされているが、実情を率直に反映しているのは、評論が指摘する「現実」であろう。社説の上記表現も、「意識水準」を「上から言われたことをうのみにせず、主体的に判断する思考水準」あるいは「生活等に関する要求水準、権利意識の水準」と考えれば、そうした実情を婉曲に反映したものとも考えられる。いずれにせよ、そうした人々を対象に「総秘書同志がいらっしゃれば我々は必ず勝利するとの鉄石の信念」を扶植するのは容易なことではないように思える。