rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年11月1日 社説「主体の思想論を百勝の武器ととらえて、革命的思想攻勢の砲声をより高く轟かそう」

 

 標記社説は、冒頭で、「思想の威力ですべての問題を解決し、革命の前進を加速化していくことは、我が党の伝統的な闘争方式である」とした上で、「すべての党組織と幹部は、革命的思想攻勢の砲声によって、社会主義建設のすべての前線において大飛躍、大革新を起こし、国家復興の高潮局面を力強く開いていかなければならない」と訴え、その具体的な目標・課題として、次のような点を掲げている。

 第一は、「党中央の革命思想を人民の中に植え付ける拡声器、マイクの出力を絶え間なく高める」ことである。ここで、「党中央の革命思想」とは、すなわち「金正恩同志の革命思想」を指すのであろう。そして、ここでの、「全党と全社会を党中央の革命思想で一色化することは、我が党思想事業の基本任務」であるとの主張からは、社会を「一色化」すべき基本イデオロギーとして、「金日成金正日主義」と「金正恩同志の革命思想」の並行状態が続いていることがうかがえる。

 第二は、「敬愛する総秘書同志の偉大性を信念として堅持するようにすること」であり、そこに「思想事業の主たる力を注がなければならない」と訴えている。こうした主張は、10月20日付けの本ブログでも指摘した金正恩に対する「信頼」の揺らぎを反映したものとも考えられる。

 第三は、「激変する時代の要求に即して思想教養事業を新しく斬新に行うこと」である。より具体的には、「講演を一つ、政治事業を一つ行うにしても、人民が聞きたがり、知りたがるような問題を党政策に立脚してうまく説明」し、「出版報道、文学芸術部門において今日のあふれる現実と我が人民の英雄的闘争を盛り込んだ斬新でアピール力の強い名作、名編集物を多く作り出し、大衆の革命的気勢と熱意をより鼓舞」することなどを求めている。

 第四は、「党中央委員会第8期第6回、第7回、第8回全員会議の決定貫徹のための闘争へとすべての人民を呼び起こすための一大思想攻勢を展開」することである。その具体的方策としては、「今年の闘争目標は主客観的条件と潜在力を十分に打算して立てられた現実的で実現可能な闘争課題であり、必ず我々の力で占領することができるとの信念をより倍加」することなどがあげられている。ここからも、逆に、年末まで2か月となった現在、人々の間に「今年の目標実現は無理」との悲観的雰囲気が拡散していることがうかがわれる。

 以上、基本的には新味のない主張であるが、諸々、北朝鮮の実情を改めてうかがうことができるのではないだろうか。