rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年3月29日 党宣伝部門幹部講習会を開催、金正恩が書簡送付

 

 本日の「労働新聞」は、朝鮮労働党第1回宣伝部門幹部講習会が3月28日から4・25文化会館において、李日換をはじめとする党中央の宣伝、組織関連部門幹部ら出席の下で開催され、金正恩が参加者にあて「形式主義を打破し、党思想事業を根本的に革新することについて」と題する書簡を送付したことを報じるとともに、同書簡の内容を詳細に紹介する記事を掲載した(書簡全文は未公開)。

 同講習会は、初日には、李日換秘書が同書簡の朗読と「報告」を行った後、「討論」が行われたとのことで、2日目以降に継続されているようなので、閉幕を待って概要をまとめることとし、今日は、とりあえず金正恩の書簡の概況を紹介したい。

 書簡は、「思想第一主義、まさにこれが難局を打開し、新たな勝利を成し遂げることができるようにする根本秘訣であり、朝鮮労働党固有の革命方式である」として、思想活動の重要性を強調した上で、その役割を「党中央の思想と闘争方針を幹部と党員と勤労者の中に深く浸透させ、彼ら皆の力を党政策貫徹という一つの目標へと志向させ呼びこすこと」と位置付け、「党中央の思想と意図を下部末端までその都度正確に伝達浸透させ、その貫徹へと全党、全国、全民を呼び起こすうえで出力の高い拡声器、マイク、雑音のない増幅器となる」ことを今次講習会の「基本精神」であると強調、「党宣伝幹部は、党中央に忠実な出力高い拡声器、雑音のない増幅器になろう!」とのスローガンを提起した。

 そして、そのためには宣伝部門の活動において「根本的な変革が起きなければならない」として、様々な課題を提起している。具体的には、①理論研究を強化し、理論宣伝事業を活性化すること、②形式主義を打破すること、③偉大性教養、忠実性教養において、「党員と勤労者が党の偉大性について心臓で体得するよう」にすること、④革命史跡を通じた教養活動を実質的に行うこと、⑤愛国主義教養を粘り強く実効を上げるよう行うこと、⑥個人主義、利己主義を克服し、社会主義的人間としての思想精神的風貌を備えるよう導いてやる原則で、集団主義教養と階級教養、道徳教養を密接に結びつけ、攻勢的に行うこと、⑦反社会主義、非社会主義との闘争において思想戦の砲撃を集中化、精密化すること、⑧宣伝扇動攻勢をより猛烈に行うこと(「党中央が新たな闘争綱領や政策を提示したら」各種宣伝活動を活発に展開すること)、⑨直感宣伝、直感扇動を重視、政治思想性、時期性を保障(スローガン、標語などをはじめとした直感物の活用など)、⑩最新科学技術の成果を広く取り入れること(「党宣伝部門における現代化、情報化」など)、⑪担当者の「資質向上」などであった。

 このうち特に強調されているのは、書簡の題目にもなっている②で、「形式主義の思想的基礎は革命の主人らしい自覚の欠如にある」として、宣伝部門担当者の「主人らしからぬ態度」を批判し、「重大な使命感」を持って、「宣伝教養の新たな方法と斬新な妙術を積極的に探求し活用する」ことを求めたとされる。

 また、③を訴える中では、「人民大衆第一主義」に言及し、「人民に幸福で文明な生活を準備してやることも重要だが、彼らが真情で党で国家の恵沢を有難く受け止め、それに報いるため努力するよう教養することがより重要である」と述べている。本ブログでかねて指摘してきた「人民大衆第一主義」の本当の狙いを余りに率直に述べていることに驚かざるを得ない。

 一方、⑦については、一般報道などでは大きく取り上げられたが、実際は、言及の量は多くなく、表現も平板であった。

 むしろ、全体を通じて印象的であったのは、「党中央」の思想、方針などを国の末端まで確実に伝達するとの課題を繰り返し強調していることで、換言すると、現状では、(少なくとも、金正恩の認識では)それが不十分であるということであろう。