rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年3月31日 党宣伝部門幹部講習会閉講

 

 本日の「労働新聞」は、標記講習会が30日、3日間の日程を終えて閉講したことを伝えている。なお、同講習会2日目の状況は、昨日の「労働新聞」で報じられた。これら記事によると同講習会の概況は、次のとおりである。

初日(3月28日):李日換が金正恩が書簡送付伝達後、「報告」。「討論」。

2日目(3月29日):「討論」続行。氏名を報じられた「討論」参加者は、平安北道党委秘書をはじめとして19人。各道、市・郡及び連合企業所党委員会の幹部が大半で、初級党、里党の幹部が若干名、それ以外に革命史跡指導局局長、万寿台創作社社長がいた。その後、「今後の思想事業において提起される理論実践的問題を深度を持って認識するための実務講習」を開始

3日目(3月30日):「講習」継続。李日換秘書及び党中央幹部学校教育幹部が出演。主な講習内容:①「思想事業を党事業の中核中の核として扱い、思想の威力で革命の勝利的前進を推動し、固く担保しようとの党中央の意図を正確に認識し、我が党の思想論で武装するための学習」:「全党と全社会を敬愛する金正恩同志の革命思想で一色化することを党思想事業の総的方向、総的目標として堅持していくこと」、「党中央の唯一管理制原則を生命線として堅持し、それに反する現象に対しては絶対に黙過せず強く闘争する」、「社会のすべての成員を党中央の革命思想を信念化、体質化した真の忠臣、熱烈な愛国者としてしっかり準備させる思想教養事業」などを強調、②「党思想事業の形式と方法を根本的に革新することについての問題」:「直感宣伝、直感扇動を重視し斬新に展開し、全国が党中央の思想で脈打ち、革命的雰囲気で沸き立つようにする」、③「帝国主義の思想文化的浸透策動の反動的本質と害毒的後遺についての講演」など。最後に、「社会のすべての成員を敬愛する総秘書同志の革命思想の絶対的な信奉者、固い擁護者、徹底した貫徹者として準備させる思想戦線の旗手となるとの揺らぐことのない信念と意志を込めた宣誓文」を採択。

 以上の内容、とりわけ「講習」に関する記事において印象的なのは、金正恩の書簡と同様、「党中央」ないし「金正恩同志の革命思想」の伝達、浸透が繰り返し強調されていることである。②は、それを以下に伝えるかの方法論的問題であろう。一方、「講演」に関する記事でも、③については、通り一遍の記述ですまされている。党宣伝部門の現下の最重要課題は、金正恩の意向を迅速に、ぶれることなく、徹底して末端にまで浸透させ、それに沿った働きをさせることにあると考えて間違いないのではないだろうか。

 なお、北朝鮮においては、かねて各部門の会合が開催されている中で、党宣伝部門幹部の講習会が「第1回」(つまり、これまで未開催)であったというのは意外な印象を受ける。

 いずれにせよ、今次の開催には、「金日成金正日主義宣布10周年」という趣旨も含まれているようだが、かつての「金日成金正日主義で全社会を一色化」のスローガンから、今日の「金正恩同志の革命思想で一色化」への変貌(下線部参照)は、この10年間における金正恩の権威向上を端的に象徴しているといえよう。そもそも、「金日成金正日主義」なるものは、金正恩が創始し、解釈権を独占していたのであるから、実質的には当初から「金正恩同志の革命思想」と事実上同一であったのだが、執権10年を経て、誰はばかることなく、堂々とそう呼ぶことがでるようになったということであろう。

 それと余談だが、講演者として「党中央幹部学校教育幹部」が言及されている。以前にも指摘したところだが、やはり、この「党中央幹部学校」というのは、かつての「金日成高級党学校」が改称されたものと考える。