rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年3月4日 社説「全党の初級党秘書は党中央と人民の期待に決死の実践で報いよう」

 

 標記社説は、言うまでもなく、第2回初級党秘書大会が終了したことを受けたものである。まず、同大会の「基本精神、基本思想は、初級党秘書が真の母の心情で、誠実な従僕の姿勢で人民を奉じ仕え、党の人民的性格を無条件貫徹することである」とした上で、「党中央」の初級党秘書に対する期待が何かを論じている。

 その第一は、「人民を熱烈に愛し誠を尽くして奉じる従僕になれ」ということ、二番目は、「党の重要決定が立派な結実を結ぶようにする完璧な実践家になれ」ということである。

 また、そうした期待に応えるためには、「正しい方法論を具現しなければならない」として、「力を注ぐべき問題は、第一には人々の思想意識を改造することであり、第二には人民の福利増進のための我が党政策が現実に転換するようにすること」であるとしている。

 また、「母なる党の政治幹部としての役割を全うする上で重要なことは、人との事業(対人働きかけ)を根本的に改善することである」として、初級党秘書の「人々を教養改造し、組織動員する任務」の重要性を強調している。

 本社説のこうした主張は、同大会の狙いを改めて端的に示したものといえよう。

 なお、同大会の閉幕(2月28日)以降のこれまでの関連動向を整理しておくと、3月2日付けの記事で、「第2回初級党秘書大会参加者のための講習」の開催(金在龍部長らが講演)及び平壌市内各所参観(万景台、党創建事績館、朝鮮革命博物館「偉大な首領達と戦友館」、大城山革命烈士陵、祖国解放戦争参戦烈士墓など)が報じられた(期日は言及ないが3月1日のことであろう)。

 そして、3月2日には、昨日紹介したとおり、金正恩との記念写真撮影及び記念植樹を行い、3月3日には、「金正恩同志に捧げる宣誓文」採択集会が開催されるとともに「重要芸術団体が出演する芸術公演を観覧した」ことが報じられている(本日付け記事)。

 これら講習会や宣誓文採択集会などに際しての報道内容も、概ね、上掲社説と同趣旨といえる。

 結局のところ、同大会を通じて求められたのは、人民の生活保障、便宜供与のための初級党秘書による献身的努力であり、その目指すところは、「人民大衆第一主義」の名の下での人民の「善導」と「動員(勤労意欲引き出し)」であったといえよう。そして、それらを包括する上で象徴的に用いられたのが「母なる党」という表現で、子供の面倒を見ると同時に、教え育てる「母親」にたとえることによって、党幹部の果たすべき役割を分かりやすく示したと考えられる。そうした考え方は、一般に「父権主義」(パターナリズム)と呼ばれるが、金正恩時代の朝鮮労働党にあっては、「母権主義」(マターナリズム?)と呼ぶのがふさわしいのかもしれない。金正恩は、見た目的には金日成と似たイメージを敢えて演出しているように言われるが、この点に関しては、金日成の場合は、明らかに「父」のイメージが強かったのとは対照的に、むしろ「母」のイメージを用いようとしているといえるのではないだろうか。先般、党ないし金正恩に対する思慕の念を込めた曲として大いに喧伝された歌謡も「私の母」というような題目であった記憶がある。