rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年3月5日 2月の各部門経済計画取り組み状況を報道

 

 昨日(3月4日付け)の「労働新聞」は、「意義深い今年を新たな勝利で輝かす熱意抱き力強く前進 人民経済諸部門と単位で2月計画完遂」と題する記事を掲載した。

 記事は、冒頭で「人民経済諸部門と単位の幹部と労働階級が・・2月人民経済計画を完遂した」としているが、部門ごとの実績を紹介した部分を見ると、「完遂」「遂行」の表現は多くない。

 まず、冒頭に紹介された金属工業部門では、筆頭にあげられた黄海製鉄連合企業所が「鉄鋼材生産において成果を収めた」としているのをはじめ、いずれの企業所についても「遂行」等の表現は一つもない。

 次の化学工業部門については、興南肥料連合企業所に関し、「託された肥料生産計画を遂行した」とされている。

 続く電力工業部門でも、北倉火力発電連合企業所に関し、「託された電力生産計画を日別、週別でたがえることなく遂行した」としている。

 更に、石炭工業部門に関しては、「石炭工業部門の幹部と労働階級が・・2月石炭生産計画を完遂した」として、部門全体としての計画完遂を報じている。

 鉄道運輸部門に関しては、各単位において「輸送実績増大」などと報じるだけで、計画遂行の表現はない。

 機械工業部門でも、傘下各単位に関し、同様に「偉勲創造」などの表現が用いられているだけであった。

 一方、建材工業部門に関しては、「祥元セメント連合企業所、順天セメント連合企業所など・・で2月計画を完遂した」として、セメント部門全体ないし多くの単位での計画遂行を報じている。

 採掘工業部門及び林業部門に関しては、いずれも「生産増加」などと、また、軽工業部門に関しては、「積極的な闘争」などの表現だけとなっている。

 総じて見ると、「計画遂行」が明記されたのは、部門全体としては石炭鉱業部門だけで、セメント生産部門がそれに準じた状況、それ以外の個別単位では、興南肥料連合企業所、北倉火力発電連合企業所の2か所だけということになる。

 以上のような分析は、計画を遂行できた部門、単位については、必ずそう表現するであろうとの前提(仮定)に基づくものである。その前提が間違っているおそれも否定はできないが、同記事の表題及び冒頭の記述などからしても、計画の「完遂(ないし遂行)」が重要な概念となっているのは間違いなく、そうであれば、それが実現できた場合、それを明記しない理由はないと考えてよいのではないだろうか。

 そうした前提が正しいとするなら、北朝鮮経済は、今年も出だしから相当の緊張状態にあるといえよう(そのこと自体、金正恩が予告していたとおりであるが)。

 なお、北朝鮮がまたミサイル発射を行ったようである。韓国軍の発表に基づく韓国報道によると、5日午前8時48分ころ、平壌順安付近から東海(日本海)上に弾道ミサイル1発を発射、飛行距離約270㎞、高度約560㎞、とのことである。「偵察衛星用撮影機の試験」を主張した2月27日の発射と飛行経路(順安付近→日本海上)、飛距離(当時は約300㎞)、高度(同約620㎞)共に類似しているが、今回は、どのように説明するのか、明日の報道がまたれる。