rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年12月5日 論説「我々式社会主義の全面的発展は、思想、技術、文化の3大領域における新たな革命である」

 

 標記論説は、「我々式社会主義の全面的発展」という文脈において、思想、技術、文化の各領域における「新たな革命」の課題を提示したものである。

 まず、「思想領域における新たな革命」に関し、「我々式社会主義の全面的発展の優先的要求である」とした上で、「今、時代は変わり人々の意識状態と社会的環境も大いに変化した。現実は、思想事業が時代に先行し絶え間なく新しくなることを要求している。過去の旧態依然たる固定的格式化した古い方法から大胆に抜け出せなければ、思想事業が生気を失い沈滞に陥ることになり、千万大衆の愛国の熱情と知恵を社会主義強国建設のために総動員することができない」として、思想活動の方法論的転換を強く求めている。また、その目標に関しては、「全党と全社会を敬愛する総秘書同志の革命思想で一色化すること」を「今日の思想革命の最も重要な課題」として掲げている

 次に「技術領域における新たな革命」に関しては、「我々式社会主義の全面的発展のための力強い推動力」とした上で、「国の全般的な科学技術を先端水準に押し立て、科学技術の主導的、牽引機的役割を決定的に高める」ことなどを求めている。そして、その重要性については、「すべてが不足し困難な今日、我々が信じるものはほかでもない科学技術力であり、我々が生きていく唯一の出路も科学技術に依拠し自力で立ちあがること」との論法で強調している。

 最後の「文化領域での新たな革命」に関しては、「我々式社会主義の全面的発展のための確固たる担保」とした上で、「社会のすべての成員を革命化され道徳義理的にも完成された人間として育てる」ことを求めると同時に、「新たな文化革命の目標は、全(人)民を人材化し、あらゆる文化的落伍性を清算すること」とも述べ、この文脈で「全民科学人材化方針」や「農村の時代的落伍性を払拭し、地方の特性が生きる農村特有の新たな文化発展」などにも言及している。

 なお、前述の「全党と全社会を敬愛する総秘書同志の革命思想で一色化」との表現に関連しては、朝鮮中央放送の12月4日20時のニュース番組の中で、3日に平安北道で開催された「8月草加工工場」の竣工式において、工場建物の正面上部に「全党と全社会を金正恩同志の革命思想で一色化しよう!」とのスローガンが掲示されている場面が放映されていた。また、同式場には、11月26日の本ブログで紹介した竣工式と同様、「偉大な金日成金正日主義万歳」というスローガンと対になる形で「偉大な金正恩同志革命思想万歳」というスローガンが置かれていたが、従前は、「社会を一色化」するのは「金日成金正日主義」によってとされていたところ、今回の建物に掲示されたスローガンは、それにとって代わる形で「金正恩同志の革命思想」を用いており、従前の両者並列扱いよりも、金正恩の権威付けを一段と進めたものといえよう。

 そして、それと同旨の表現がこうして文字媒体の中で、「今日の思想革命の最も重要な課題」として掲げられていることは、大いに注目されるべき出来事といえよう。執権10年を迎えて、金正恩の権威付けに関し、非常に重要な展開が準備されているように思える。